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第194号『野心ある戦い』

【鎌ヶ谷球場】
【鎌ヶ谷球場】

散歩には暑すぎ、読書するには少し体がムズムズしていて落ち着かない、そんな気分の午後。
自宅から車で20分ほど走ると、北海道日本ハムファイターズ2軍のホーム、鎌ヶ谷球場に到着する。
球場からは低く静かな歓声と打球音が聞こえてくる。

入場料を払い、階段を駆け上げると濃緑の芝と黒土のグラウンドが目に飛び込んでくる。
観客はまばら、最上段のベンチに腰掛ける。
年配の男性が目立つ。
選手へのヤジが飛び交う。
「おまえも今年でもう終わりだな」
「なんでこんなところにいるんだよ」
しかし、ここに集まる観客はなかなか侮れない。
競馬や競艇の予想屋のような熟達の野球目利きが多い。
彼らは、選手の高校時代や中学時代の成績までチェックして観ている。

ピッチャーズマウンドには3年目の左腕、背番号13の須永英輝が立っている。
一昨年の夏、彼のピッチングをここではじめて見た。
しなりのある投球フォームから、切れのあるストレートと鋭いスライダーがすばらしい。
須永は浦和学院2年生のとき甲子園春の選抜でベストエイト、3年の選抜では3回戦敗退、夏は県大会準決勝で聖望学園に敗退している。
契約金推定1億円、年俸1000万円。
その素質を見込まれ高校生No.1左腕として入団した。
すぐにでも1軍で投げられるピッチャーだと思った。

しかし、これまでのところ期待に応えるほどの結果は出していない。
この日、久しぶりに彼の投球を見たがピリッとしない。
何かが足りない。

2軍も1軍同様、シーズンを通してチャンピオンフラッグを奪取するために戦っている。
ただ、1軍との違いはリーグ編成がセントラル・リーグ(阪神タイガース、中日ドラゴンズ、横浜ベイスターズ、東京ヤクルトスワローズ、読売ジャンアンツ、広島カープ)とパシフック・リーグ(千葉ロッテマリナーズ、福岡ソフトバンクホークス、西武ライオンズ、北海道日本ハムファイターズ、東北楽天ゴールデンイーグルス)の2リーグではなく、日本列島を東西に分けイースタンとウエスタンの2リーグである。
だから、例えばこの日のカードはファイターズ対スワローズの対戦のように1軍ではパリーグとセリーグに分かれているが、ここでは同じイースタンリーグして戦っている。
そして、もう1つの特徴はこれから1軍へと駆け上がっていくものと、戦力外通告を受け、別な人生を歩むことを余儀なくされるものとが混在する場所なのだ。

たくさんの才能がしのぎを削り、ガツガツと欲望や野心を剥き出しにしてぶつかり合っている姿を見るのは存外に気持ちがいい。

途中、コンビニで買った弁当をひろげ缶ビールのふたを開ける。
弁当をつまみ、グビリと飲む。
近くに陣取るオヤジの独り言がなにげなく聞こえてくる。
「須永は素質はあるが、どうしても勝ちたいと思う野心がないんだよ。」

なるほど!足りない何かがわかった。
「野心」この一言こそが、須永がここから這い上がるための呪文だと思えた。

頭上にある6月の太陽は、球場の芝をキラキラと、まるで海原のように輝かせている。
汗がじわりと出る。
そして、己はどうだ。
「野心ある戦い」をしているかと自問してみた。

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