第1087号『映画『国宝』を観た』

週末、妻と映画『国宝』李相日監督作品を観た。6月6日(金)に公開されたばかりの作品だから、口コミなどの事前情報もほとんど入っていない状態での鑑賞だった。エンドロールが終わっても、しばらく席を立てず、ただただいま観た映像体験に圧倒された。こんな気分になったのは、2010年に観た『告白』中島哲也監督作品、そして同年上映された『悪人』李相日監督作品を観て以来のことだ。

驚いたことや感動したことは、静寂の湖に石を投げたごとく波紋のように拡がる。事実、映画『国宝』は週が開け、映画・ドラマ・アニメのレビューサービス「Filmarks(フィルマークス)」では4.4の評価。しかも4.1から5.0の評価をつける人が76%という高評価。映画.comでは4.4、シネマトゥデイでは5となっている(いずれも5点満点中、6月8日時点)。ネットでも「今年いちばんの映画」「とんでもない映画」「100年に一度の大作」「この映画こそが『国宝』」など、高い関心と評価が書き込まれている。市井の映画ファンとして、とても嬉しいことである。

生きているということは、時間を奪い合うゲームのようだと思うことがある。何かで動くことは他の何かができないという、ゼロサム・ゲームである。漫画にするか小説にするか、プレステーションにするか映画にするか。とりわけエンタテインメントは、時間を奪い合う激戦区である。だから、普段映画を観ない人達がザワザワしてくれることは、嬉しい。そうでなければ、収益があがらず、結果として優れた才能が集まりにくくなる。

そうした意味で、今年の映画界隈は良き状態にある。その一例として、カンヌ国際映画祭での邦画の躍進が挙げられるのではないか。出品数として日本映画界史上最大数の10作品。数も、そしてその内容の多彩も目を見張るものがある。

まずは、李相日監督の『国宝』は「監督週間」で注目され、加えて、団塚唯我監督の初長編デビュー作『見はらし世代』も高い評価を受けている。また、早川千絵監督の『ルノワール』はコンペティション部門にて前作『PLAN75』から3年ぶりとなるが、温かくカンヌに受け入れられた。さらに、「ある視点」部門ではベネチア国際映画祭オリゾンティ部門で『愚行録』(2017年製作)の評価が高かった石川慶監督が、カズオ・イシグロとタッグを組んで、戦後の長崎を舞台に描いた『遠い山なみの光』が上映された。そして、「ミッドナイト・スクリーニング」では、昨年サン・セバスティアン国際映画祭にて、日本人として初の最優秀監督賞を『百花』にて受賞した川村元気監督の『8番出口』が、真夜中の上映にも関わらず、満席の観客からスタンディングオベーションを受けた。

小津や成瀬、黒澤などの日本の巨匠たちのDNAを受け継いだ是枝裕和監督や河瀨直美監督など実力派が、いまや世界の巨匠になりつつある。そして、その映画を隅々まで研究し尽くしている次世代の監督やプロデューサーたちが世界戦略も見据え、自らの映画作品を武器にして世界のマーケットに戦いを挑んでいることは、必ずや日本映画の未来を明るいものにしてくれると信じている。

さて今週末、監督・役者陣・製作スタッフと映画『国宝』に関わった全ての人々が、命を削って作り上げた結晶を是非、映画館で観て欲しい。それは、自宅で鑑賞するのとはまったく別次元の体験を味わうことになるだろう。この映画は、まさしくその体験を保証してくれる作品である。きっとあなたも観終わって、衝撃と余韻でしばらく席を立つことができなくなるだろう。

【付録】今年3月にファンサイト有限会社の取締役に就任した次男、川村勇気のブログです。これから隔週でブログを配信します。ご高覧いただければ幸甚です。

ファンランドへようこそ
#3 時間という「タラント」

ファンランドへようこそ。ファンサイト有限会社、取締役の川村勇気です。
人生もやっと半分を超えてくるといろいろ見えてくるものもあるわけですが、最近よく思うのは、有形・無形を問わず、とにかくあらゆる財産は投資と同じで「時間が味方をする」ということでしょうか。

https://note.com/yukikawamura0407/n/ne2fccf2f542b?sub_rt=share_pb&fbclid=IwY2xjawK26Q9leHRuA2FlbQIxMQBicmlkETFJT3RsU1VEWnV1NUh4ZmRXAR77F51M3RdJKNi1jfyz4tkqcHktmqYHnKuVOUPbgl2tW5dgCCjTw1uEyiJR3w_aem_HGh2juvbdAmowP1SlLemqA

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です