第161号『ミナミさんの秘密ー下』

ボストンクラブを飲んで、極楽気分で覗いて見るサイト=「極楽クラブ」に案内役のようなキャラクターを登場させてみたらどうだろうと提案した。
どんなキャラクターがいいのか。
さんざん考えたがなかなか思いつかない。
そこで、そのキャラクターをもっと具体的に、どんな人物像かと思いめぐらしてみた。
こよなくウイスキーを愛し、毎夜ちびりちびりと飲んでいるこの人は・・・と。

地方都市、例えば新潟とか仙台とか札幌で暮らしてる男性。
38歳、独身。
職業、国語の教師。
趣味は料理と音楽、そして旨いウイスキーを飲むこと。

こうして、徐々にその輪郭をかたどってみた。
僕の頭のなかで勝手にこの人物が動き出す。
職場での働き方や、休日の過ごし方などがぼんやりと見えてきた。
でもなかなか、そのキャラクターに合う名前が決まらない。
大概、そうなのだがさんざん考え抜き、もうこれ以上は思い浮かばないところまでいくと、頭の中が真っ白になる。
そして、突然ポンと弾けたように高校時代の古文の先生の顔が浮かんだ。

「ミナミさん」という名前はこうして生まれた。

かくして、ボストンクラブのファンサイト「極楽クラブ」は2001年4月に誕生した。
そして、愛すべきキャラクター「ミナミさん」はこの極楽クラブになくてはならない存在となった。
BBS極楽掲示板への書き込みだったり、レシピの紹介、イベント(オフ会)の呼びかけだったりと、単にキリン・シーグラム社の利益誘導者でもなく、メンバー会員の代表というのでもない、まるでホテルのコンシェルジェのような役割を担うキャラクーとしてそのポジションを獲得していった。
ミナミさんがいうのだから凡そ、信用できる、といった具合にである。

スポーツ紙にサイトの告知をしたり、懸賞サイトからのユーザー誘導やボストンクラブのボトルにベタ付けでの試飲用ボトルプレゼントの企画をサイトで集客したり。
大きな予算でなくとも可能なものならありとあらゆる方法を試みた。
こうして、会員はオープンから2ヶ月後の6月上旬で7万5000人に達し、その後会員は増え続け、2003年にキリンビール社との統合によって、その幕が降りる頃には17万人の会員を擁するまでになっていた。

このサイトに係われたことで、私自身、幾つもの発見と喜びを得た。

例えば、ボストンクラブの売り上げが、数%伸びたとの報告も聞いた。
例えば、古野氏の後任でボストンクラブの担当になった杉山直人氏(サイトでは、ミナミさんの弟分スギゾーのキャラクターで登場)、からBBSでのファンとのやりとりを教えてもらったことがある。
「自作のつまみを極楽クラブに紹介され、それがきっかけで、夫と一緒に飲むようになった」という主婦の方のお話しや、結婚しその後お子様が誕生し、写真をお送りいただいた方など、その密度と広がりには、単に商品を供給するメーカーとユーザーとの関係を越える何かがあった。と。
それがファンサイトと言われるもであるならば、おそらく、ここから新たな企業サイトの1つのカタチが生まれる可能性を秘めていると確信している。

ミナミさんやスギゾーと別れて随分と時間が経つ。
さて、そろそろ新たなミナミさん達に出会える予感がしている。

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