パリにいったことがあります。
市内の繁華街に観光客用の土産物屋が立ち並んでいて、そのガラスにカタカナで「ルイ・ヴィトン」とか「シャネル」とか書いてあるのにビックリしました。
昔から日本人のブランド好きはご存知の通り、ヴィトンならヴィトンのバッグを海外で買い漁る日本人観光客の姿は、嘲笑の的になっていますよね。
話しは変わって地元に「ソース焼きそば」で有名な店があります。
「ラーメン」でも「チャーハン」でもなく「ソース焼きそば」なのです。
高校生の時友人に紹介されて行ったときは、じいちゃんばあちゃんの老夫婦が切り盛りしていました。
焼きそばにはきまってトリガラのチャーハンスープが付くのですが、そのスープを運ぶときばあちゃんの指が入っていたのを指摘されたばあちゃんが
「大丈夫よ、熱くないから(!)」
という名セリフを残したというエピソードと、高校生を満足させるに足る量の多さで強烈に私の心にその店はインプットされました。
そしてその後足が遠のき10年以上の月日が流れ、つい先日本当に久しぶりに前を通ったとき、昔と変わらずのれんがでているのを見つけ思わず入ってみました。
「ガラガラ・・・」
引き戸を開けると中は昔と基本的に変わっていませんでした。
厨房の奥は普通の民家の居間が覗いている典型的な「昭和の食堂」。
私、空気感も含めた「狙ってない」トータルコーディネートが大好きなんですよ、しかもジャンクなやつが。
が、居間には仏壇が客席を向いて置かれており、中には中年の息子さんと思われる男性と奥さんに変わっていました。
「そりゃそうか・・」
迷わず今は亡きじいちゃんばあちゃんに敬意を表して焼きそばを注文しました。
「!」「昔のまんまだ。。。デカイ!」
「ずるずる・・・」「昔のまんまだ。。。う、うまい!」「ずるずるずる」「ずるずるずるっ」「ずるずるずるずるずるーーーー」
・・・完食です。
見事に高校生のときのまま忠実に再現されたその味に感激した私は、高校生のときにお店に来ていたこと、そのころは店はじいちゃんばあちゃんだったことなど話しました。
さすがにスープの話しは向こうから見える仏壇が怖くて黙ってたけど。
今のご主人は息子さんで、その受け継がれた味はウェブコミュニティ「mixi」でも取り上げられ、遠く東京からもその焼きそばを食べに来る人がいるそうです。
朴訥そうなご夫婦は、そんな話を少し照れながらもうれしそうに話してくれました。
暖かいなあ。
これもこの店の「ブランディング」なんだよなあ。
代表の川村がよくお客様に対して「ブランドとはお客様に対する約束である」という話しをします。
なるほど、なぜブランドが支持されるのか。
それはお客様に対してそのブランドが確実に約束を果たしてきましたよ、という証なのだということですね。
ファンサイトの「ブランド化」の為に必要なこと。
それは何をお客様に約束できるのか。
どんな価値をお客様に約束できるのか。
非常に難しい課題です。
その約束を果たす為にまずは「自分自身のブランディング」をさらに高めなきゃならん、ということを、焼きそばの皿と、厨房の奥に見えている仏壇を交互に見ながら、私はぼんやり考えていました。