よく日本の起こる変化は、10年前のアメリカで起った変化だと言われます。
振り返っても、おそらくこのことは間違いないように思いますが、しかし、感じるのは、変化の生成がいまや10年のスパンではなくさらに短縮していることです。
とくに9:11以降、アメリカでは消費者の考え方が根本的に変わってしまったと言うことですが、これも私たちにはチェックポイントでしょう。
この変化の原因としては、ひとつはテロの戦い言う新種の戦争が引き起こされたこと、もうひとつは経済悪化による長引く景気の低迷、これら2つのことが広告コミュニケーションに対してインパクトを与えている、そう主張しているのがセルジオ・ジーマン氏*。
つまり、テロ攻撃は、人々の活動に心理的な制限を与え、「安全」が重要性を増し、一方、アメリカ資本主義のエンジンである過度の個人的な満足の追求、社会的な成功、物質主義はパワーを失ってきていること。
また、景気の後退は、人々に、現在手にしている仕事の大切さ価値について強い関心を持たせ、さらに質素な、よりリスクの少ない生活に向かわせているとの見解です。
まさにこの戦争と景気後退の組み合わせは、いまの日本でも起こっている現実です。
テロや北の侵略幻想により、軍事体制の必要を煽り、また軍事産業の復活への期待を投げかけ、不景気への目を逸らすと同時に「強い」日本の復活を幻想させる政治状況は、まさにアメリカでの消費者が置かれている状況と何ら変わりはないようです。
不安と先行きの見えない時代では、何時の世でも、消費者は自分たちに慣れ親しんだモノや安全なモノを求める傾向にあると言われます。
紅白での白組の優勝、小津監督など往年の名作品への人気の高まり、人気映画シリーズビジネスの成功、パワーブランドへのさらなる支持、なぜか、不明の小泉支持率の再浮上などなど、こうした一種の保守回帰現象には、こうした将来不安には在るのかもしれません。
どうあれ、長く培われてきた日本人の価値観は、いま、一挙に崩れようとしています。
*アヤ・コーラで有名な広告人。元コカコーラ社最高マーケティング責任者