第216回『来年はどう生きる?』

▼進めば地獄、退いても地獄?

 お歳暮商戦、すでにスタート。10月の声を聞くと、もはや年末を視野に入れなければならなくなります。しかし、今年は年末どころではなく、どう乗り切っていくか?次年度以降に向けてどう経営の舵をとっていくか?かつてない深刻な見通しのなか、既存商売の存続か?廃業か?の判断を迫られている事業者の方も多いのではないでしょうか?
 前に進む、下がる、撤退する、いずれの選択を行うにしろ、通常時以上の能力と資金がなければ、不可能なことは経験上からも理解できます。正直、前も後ろも地獄です。

▼リーダーシップへの誤解

 困難な局面にはリーダーの資質が問われるとよく言われます。その通りだとは思いますが、こうした指摘が通用するのは、一般的には大手企業に限られると思うのですが、リーダーの資質に乏しい私の僻みでしょうか?
松下幸之助、本田総一郎、土光敏夫氏など伝説のリーダーたちの話が最近になりマスコミを賑わせていますが、これら天才の爪の垢を飲めといわれても多くの凡人事業者には無理難題と言うものでしょう。
 そもそもリーダーシップとはカリスマ的なリーダーの全能的な声と思うところに大きな誤解がありはしないでしょうか?
 少なくともリーダーシップがトップダウンで発信され、それが下位に浸透し、奇跡的なエンジンとて力を発することなどは希なことだと思います。
 またリーダーから発信されるコトバは、多くは危機の到来と、叱咤激励です。
もちろん会社の存続は、働くものにとって生活維持の最低限の保証ですから上司の発言に忠誠を示すのは当然です。 しかし、それが文字通り受け止められるか?と言うと大いに疑問です。
 とりわけ最近の傾向でしょうが、トップダウンの激励は、リストラ、転属配置転換、給与カットその他の恫喝をも伴いないがちです。
 近年、企業内での鬱病が流行していますが、これなど職場の荒廃と疑心暗鬼による職場環境の悪化の結果も大きな原因といわれていますね。

 ▼役に立つリーダーシップとは何か?

 先に故人となったスティーブ・ジョブス氏などは押しも押されぬリーダーであることは間違いないことでしょう。
彼のすばらしさについては色々と語られ伝説化していますから、いまさら言うまでもありません。
しかし、彼のリーダーシップが人々の心に届いたのは何故か?です。
それは「自身のコトバ」を通じて「語り続けたこと」ではないかと思います。
そしてこのコトバが、カタチとなり、成果となって人々の暮しを豊にしたこと、さらにはその後もさらに人々の豊かさを求める情熱にあったことではないでしょうか?
 彼を必要としたのは、資本家でも経営陣でもありません。彼を求めたのは「エンドユーザー」です。
 かつて私が感銘を受けたコトバとして「技術はヒューマニズム」だと言うコトバがあります。このコトバを言われたのはエンジンの博士と称えられていた方でした。
この方の一挙手一投足には「エンジンへのロマン」が満ちあふれていたことを記憶してい
ます。

▼自身の声こそリーダーシップ

 これから始まる困難な時代を生き抜くために私たちはどこに救いを求めればいいのか?
優れたリーダーの到来を待つのもケッコウですが、それよりも「自身の声」に耳傾けることも大切です。客観的に見てもいまや「不満は満ちあふれ」ています。
それは大きく儲けるには細かすぎる不満かも知れません。しかし一方で「マム・プレナー」と言うママさん企業家の登場が世界的な話題ともなっています。
 女性の強みは「消費者」でもあり、子を育て、未来を育む性として「自らの役割に使命感」が持てる点にあることからではないかと思います。このことは「原発問題」で言えば、声を挙げているのは母親であり女性達であることからも判ります。
 国を語り、経済を考える為政者、財界人、政治家、大手経営者からは大言壮語は聞こえても、市民や国民、その他の「命の大切さ」を語る声は希です。
 私たちも含めて、組織人とは世間とは隔絶されがちな人々です。私たちマーケターも専門家を自負する割にはエンドユーザーを知りません。またエンドユーザーとの出会いに身銭を切ることに躊躇する気分もないとは言えません。
しかし、それでは本当に役立つ情報が取れるか?反省する必要があり、良い意味で、バカになって「手を汚す」ことも大切ではないか?と思います。

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