第113号『お先真っ暗、広告会社』

いま、広告会社のビジネスモデルであったメディアのブローカーとしての役割が大きく崩れてきているそうです。そして広告ビジネスの先行きは危なくなってきたと言う危機感が横溢し始めています。
このことはいまさら言挙げするほどの問題ではなく、何十年来の言われてきた事柄なので驚くことではありません。ご承知のようにWEB2.0のインパクトが強烈で、旧来メディアの先行きが怪しくなった、そんな実感が広告会社に行き渡った所為でしょう。
むしろ驚くのはこうしたメディア偏重の問題解決に未だなんら道を見い出していないことにこそ驚きます。私だけでしょうか?

メディアに依存しないビジネスモデルへの脱却の機会は広告会社の歴史の中で一度だけあったと思います。それはいまからおよそ40数年前、広告会社がAE制を志向したときでしょう。
日本の広告業は、戦後産業の近代化と歩を合わせ、マーケティングを基本として広告主のコミュニケーション活動をサポートする役目を担うことを目的に新たなビジネスを目指しました。それがAE制。一業種一社を前提に広告のトータルサービスを提供することであったこの新サービスのことは50年代から60年代に広告ビジネスに関わった人ならご記憶があるはずです。

かく言う私もAEとして新人時代をAE制の考え、理想の洗礼を受けました。
それはともかくこのAE制は、実体があったのは5年か、6年くらいでその後は営業と同意となって、結局、AE制は形骸化してしまいました。
この理由としては、先ずTVメディアの台頭が挙げられます。新聞と比較してTVの売り上げは数倍もしましたし、制作コストにしてもグラフィックデザインの10倍以上の売り上げは見込まれました。併せて時代は高度成長期、TVの投下なしには市場浸透の手だてはあり得ない時代となったのです。

かつて私の仲間のADマン曰く「TVがマスメディア、新聞は中メディア、雑誌、ラジオはクラスメディア」と極論したほどTVの扱いこそが広告会社経営の大きく貢献したのです。またあるTV制作ディレクターは「数百万円をポケット」に海外ロケに出向いていたとも豪語していました。なんとも景気のいい話です。

こうした流れになるとAE制は手間が掛かる割には、広告会社の売り上げに寄与しないこと、またメディアサイドでも、売りたい枠を押さえてくれる広告会社を厚遇しました。

一方、広告主から見ればAE制は、所詮は儲けのよいメディアを売るための見せかけのサービスであること、また販売志向、製品志向に浸り切った企業にあっては、そもそもがマーケティングの意識が希薄であり、マーケティング・イコール・セールスそしてTV広告として、TV枠を自由にハンドリングする広告会社が便利であったなどが挙げられると思います。つまりは「理屈を捏ねないで良い枠を安く持ってこい」というわけです。またそうした経緯の中で広告会社のマーケティングには何らの期待を持たない態度が形成されたのです。
事実、いまでも広告会社のマーケティング部は何をしてるのでしょう?広告主の主張、思いこみ、自画自賛の跡付けをしたり、または宣伝部のプレゼンツールの下請け作業に終始しているのが実態で、いわゆる物議を醸す提案は自己規制してるのが実情と言ったところです。

こうした状況に、いま広告会社は生き残れるか、との世間様からの厳しい冷や水が掛けられているのです。
答えはどうか、「けっこう大変そう」というのが、私見です。
なぜか、私は、その大きな理由は、ビジネスをブレークスルーする「人材が皆無」では?と想像するからです。

この人材不在は、今日まで広告会社が謳歌していた利権ビジネスを基本とした成功体験に多く起因すると思うからです。
メディアでは食っていけない?それならどうするの?
広告会社自体のマーケティング時代の到来です。

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