よく日本の企業には戦略がないと言われます。
また、若い企業人からも「うちには戦略がないから・・・」という嘆きとも愚痴ともつかない声をよく耳にします。
しかし、企業が活動をしている以上、明示するしないは別として戦略がないはずはないのではないでしょうか?
にもかかわらず戦略がないとの批判が頻繁なのは、実は戦略についての考えが全社的に浸透していないか、あるいは戦略を具体的にするガイドラインがはっきりしていないために折角の戦略が十分に機能していないからではないでしょうか?
もうひとつは日本社会の同質性にも問題がある気がします。
多くの企業をコミュニケーション活動から眺めるにつれ、すべてが同根の発想しており差別化を強く意識しているとは思えない物ばかりです。
これは正月の恒例の広告を見て毎年感じるところです。
さらには言葉の意味するところを正確に定義しないで、曖昧な定義のままで行動指針としてしまう独自の伝統的な精神風土にもあるのかもしれません。
例えば「いいものを安く」提供することを戦略とする会社があります。
また、「最高の品質を提供する」、さらには「顧客満足度を提供」するなどです。
これ自体、異を唱えることはありません。
したがって会社全体を意志統一するには効果的です。
しかし、一歩冷静の考えると、「最高」、「品質」「満足」などいずれをとっても行動を起こすには意味不明です。
物のない時代ならいざ知らず、いまや1人100色の時代です。
すべての人にとって、最高であり、満足であることなどあり得ません。
そんなわけですから、マーケティングの現場では、マネジャーの個人的な判断で、戦略を解釈し、最終的には「売れたらいい」「儲かったらいい」「シェアをリードできたらいい」という近視眼的かつ結果オーライという事にならざるを得ません。
これが戦略不在と言うことになります。
このことは正確に言えば「戦略不全」といっていいでしょう。
この言葉は三品教授の論文に頻出する言葉です。
最近同教授の「経営戦略を問い直す」(ちくま新書)という冊子が刊行されており目にされた方も多いと思います。
最近、WEB関連の仕事を拝見するケースが多いのすが、そこでも感じるのはWEBという新しいコミューニケーション手法についても同様なことが当てあはまることです。
いま、世間を上げて一様にWEBですが、これは言えば、「コストが安い」ということの幻想に依存していることにつきます。
しかし本当ににコストは「安い」のでしょうか?
情報発信コスト、制作費コスト、またはアフリエイトなどで「安そう」で「元が取れそう」です。
しかし、膨大な情報の中で「選ばれてアクセスの対象となること」さらには類似品多数の中で「購入される」ことは容易ではありません。
費用対効果は大丈夫ですか?
皆がやるからやるでは話になりません。
WEB戦略においても戦略の不全が感じられます。
私は、受け持った授業の中で教えたいマーケティングコミュニケーションのポイントは3点だと確信しています。
それらは(1)セグメンテーション、(2)ターゲティング、(3)ポジショニングの3点です。
これらは相互に関連していますが、コミュニケーションはもとより、戦略づくりにも、戦術づくりにも必須の要諦ではないでしょうか?
安いWEBでもお金はお金、戦略を機能させることを前提に構想されねばなりません。
「お金は大切」ですよ。