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第795号『10月の満月の土曜日に』

【ゴールする稲田さん】

トライアスリートならば、誰もが一度は出てみたいと夢見る
レースがある。
それは、毎年「10月の満月に一番近い土曜日」ハワイ島コナ
で開催される「World Champion Ship」への出場だ。

このレースは、世界中で行われる予選大会を勝ち抜いたエリ
ートアスリートのみが参戦を許される。
まさしく、世界最高峰のトライアスロン大会だ。

1978年に世界初のトライアスロンレースとして開催されて以
来、毎年実施されている。
そして、今年40回目の記念のレースが、2018年10月13日(土)
6時30分にスタートの幕が切られた。

レースの総距離数226.2km。
スイム3.8km、バイク180.2km、ラン42.2km。
この長旅を、17時間の制限時間以内にゴールしなければ失格
となる。
途方もない距離、そして過酷(スイムでのウエットスーツ着
用禁止、ハワイ島独特の強い風のなかで180.2kmバイクとラ
ン)さも半端ではない。

そして、このレースに今年も日本から稲田弘さんが参戦して
いる。
稲田さんは御歳85歳(誤っての記入ではない)。
今回は、16時間53分50秒(制限時間を6分10秒の余裕をもっ
て)のタイムで見事完走!
さらに、85-89歳(現在、稲田さんのみの参加登録)エイジ
カテゴリー(年齢別)で世界記録を樹立した。

人は何歳まで、アスリートとしての生き方ができるのか?

その問への答えは・・・。
226.2kmの距離を85歳の肉体が、16時間53分50秒で移動
(泳ぎ、漕ぎ、走った)したという事実。

小林秀雄の『無常という事』からの一節である。

「解釈を拒絶して動じないものだけが美しい。(中略)こ
れが一番強い思想だ。解釈だらけの現代には一番秘められ
た思想だ。」

有無を言わせず、人を引きつけるものこそ美しく、そして
いつも新しいのである。

86歳まで、まだ20年もある。
諦めなければ(可能性はゼロではない)、いつか僕もその
新しい高みにいけるかもしれない。