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第706号『ものを創るということ』

img1【「空鏡」関根則夫写真展から】

学卒後、日活に勤めた。
当時、撮影所ではロマンポルノを創っていた。
日活を辞め、蒲田にある日本工学院専門学校の映像・デザイン・美術科の専任講
師になった。
30数年も前のことである。
その、専門学校時代の卒業生が写真展をひらいた。
台風が接近していた雨の日の午後、新宿5丁目にあるギャラリーに出かけた。

地下鉄から地上に出ると、雨が激しく降っている。
少し迷ったが、その小さなギャラリーを見つけることができた。
濡れながら傘を折りたたみ、ガランとした会場に入っていく。

壁面に写真が20点ほど展示されていた。
必要以上にクーラーが効き、肌寒く、誰もいない。
しかし、その寒さと人気のない空間に展示された作品に、なにか言いようもない、
静かな熱を感じた。

ボクは繰り返し、繰り返し観た。
しばらくすると、彼が昔のままの笑顔で現れた。

久しぶりの挨拶も早々に、いま、どうしているのか、この作品はどんな気持ちで
撮影したのか、と矢継ぎ早に言葉を浴びせた。
聞けば、写真展開催までに10年間もの時間を要したという。

彼の作品は、雨が降った翌日の水たまりに映った天空とその静寂の時間を掬い取
るというもの。
聞くだに、途方もなく、ハードルの高い条件下(雨の翌日どこに行けば都合のい
い水たまりがあり、よしんば、水たまりを見つけたとして、その水たまりに青空
と雲が映っているという条件)での撮影。

どこかに勝算があるとも思えないような根気と、気が遠くなるような作業時間。

はっきりと言ってしまえば、写真にしろ、映画にしろ、文章を書くことにしろ、
お芝居にしろ、音楽にしろ、創ることに関わることは、賢い人には向いていない。
もう一度言うが、能率的に考え、効率的に物事を整理できるような人には、もの
を創るということには向いていないと感じている。

ボクが思う、ものを創る人とは、効率的でも能率的でもないことを飽きずに拘泥
し続ける人。
そして、その果により太い根幹を成すような眼差しを発見し、発明できる人だと
思う。

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