「人気ケータイ小説、筆者は瀬戸内寂聴」このタイトルが目に入った。
日経新聞のコラム「文化往来」から引用する。
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「ぱーぷる」という筆名で、五月から四ヶ月間ケータイ小説サイト「野いちご」に投稿された「あしたの虹」という作品がある。
現在も公開されており、既に二十五万回以上閲覧されたこの作品の著書は瀬戸内寂聴。(中略)
瀬戸内は「ケータイ小説が文学をダメにするとかいろいろ言われるけれど、これだけ読まれるからには何かがある。
自分で書いてみなければわからないと思った」と執筆の動機を語る。
携帯端末での執筆はすぐ断念したが、若い世代のチェックで徹底的に「ケータイ文体」に手直しした。
「こんな単純でいいのなら、文章を選び抜いてきた今までの修行は何だったんだろう」とも考えたが、数々の作品を読み、自ら執筆したことで「この文体でしか表現できないものがあるなら無視できない」と思うようになった。
「千年前の源氏物語は今、そのままでは読めない。いろんな日本語ができても、文学原点はなくならない」。
八十六歳の好奇心による再発見である。
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凄い。
瀬戸内寂聴といえば、すでに功成り名を遂げた大作家である。
ケータイ小説、というだけで眉を寄せてしまいがちなジャンルであるが、垣根を作らず多くの読者に受け入れてもらうための文体を探し、手直しを惜しまない。
それだけではなく、閲覧回数二十五万回以上という成功を勝ち取るために、具体的に何をすれば良いのかを徹底的に研究し、実践している。
どうすればこんな凄い先達に近づくことができるのだろうかと自問自答した。
自分が出来ないと言わない限りは、やれないことも、出来ないこともない。
好奇心というエンジンをブンブン回して、躊躇なく前に進むことだ。