第225号『ecstasy』

【光の差し込む部屋】
【光の差し込む部屋】

ものの書によれば〈ecstasy〉とはラテン語を語源とし、普通〈恍惚〉と訳す。
そういった精神状態を指すので、基本的にそれで相違はない。

ただ、本来、この言葉のニュアンスとしては〈いまあるところからはみ出てしまう〉ということらしい。

つまり、何か普通では聞こえないものが、聞こえたり、見えないものが見えたり、感じたりする。
そういった普通ではない状態というのは、少し普段とはずれていることとして受け止めなければならない。

スポーツの世界では、ままあることだ。
とても人間の能力では考えられない、といった動きを見せつけられることがある。

例えば、野球で三遊間を抜けるよう強い打球を体が自然に動き、グラブに吸い込まれるように捕球する。とか、
例えば、サッカーで飛んできたボールを地面に着地させることなく、ピンポイントで捉え、キックしゴールでネット揺らすシーンをこれまでにも、幾度か見たことがある。
まるで、何かが閃き、次の瞬間、体が勝手に動いていた、としか思えない行動である。
これらは、すべて理詰めで起きた現象ではないだろう。

考えてみれば、何かが閃くときというのは、理屈で詰めていった結果として生まれたことなど一度もない。

そうした境地である。
それは何度も繰り返し、繰り返し訓練を積み、失敗を重ねた先にあるように思う。

何かが閃くということは、つまりこうした一見、無駄とも思える繰り返しの動作があって、生まれてくるのではないだろうか。

僕たちも日々の仕事を通して、こういった境地を経験することがある。
例えばプロジェクトの全体をまとめるキーワード出し、あるいは、表現のポイントとなるビジュアルイメージのアイデア。
考えても、考えても浮かんでこない。
時間がない。

そうして、仕事ではない行動や場所でポンと閃き、キーワードやビジュアルイメージが頭の中に描かれるのだ。

方法は分かっている。
ともかく、出来るまでやる。
それが〈ecstasy〉に近づくコツのようである。

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