気が付けば世の中U流行りでございます。UI(ユーザー・インタフェース)、UX(ユーザー・エクスペリエンス)などなど、Uがなければ始まらないといった様相です。Uとはユーザー、つまりは使い手を主体に考える発想です。
少し前に新聞を賑わせたゼネラルモーターズのニュースについて、「GMは、ユーザーが欲しい車ではなく、彼らが売りたい車を売っていただけじゃあなかったのか(彼らの仕事は売りたい車に優先順位を付けることだけだった、とも)」という感想を耳にしました。U流行りと合わせて考えてみると、GMはメーカーつまり作り手主体の発想に留まり続け、それが彼らの没落の要因だったと言えるのかもしれません。
最近話題の「クラウド」も、そのルーツはユーティリティ・コンピューティングであることを思うと、これもU流行りの一環だと言えそうです。ユーティリティ・コンピューティングは、所有から利用へという発想の転換を背景としたアイデアで、まさに使い手主体の発想によるものです。
さて、流行に便乗することがいつでも必ず正解であるとは言えませんが、これほどUが流行っているのですから、やはりUな視点で発想するのが今のところは必要でしょう。ウェブやインターネットをビジネスの柱に置くのならなおさらです。
しかし、Uの立場に立つのは意外に難しい。Uというのは、「あなた」自身ではないし、あなたが思い浮かべる「あなたの顧客」でもないのです。さらに、U流行りの世の中には、ウェブをはじめ、U的なものがあふれています。U的なウェブページを2、3思い浮かべよと言われてもそう苦労はないでしょう。何かを考えたり、発想しようとするときに、あなたはすでにU的な経験をいくつも持っているのです。
Uの立場に立つのが意外に難しいのは、そうした機知の経験に振り回されてしまうからでしょう。Uとは自分自身だと、または熟知している顧客像のひとつだと断定してしまう。どこかで見たことのあるウェブページや機能が、Uのために必須なものだと思い込んでしまうなどなど。こうしたことは、U流行りの中で、しかもU的なものにふんだんに取り巻かれているために起こる錯覚ではないでしょうか。Uな発想をしているつもりが、自分に都合のよいものにすり替わっている。発想の転換はなかなかに厄介な課題です… 解決策は、まずは虚心になって使い手主体で考えることがその第一歩かもしれません。まだ見ぬあなたのビジネスのUを見出す邪魔をしているのは、あなた自身にあるようですからw