昨年末から、新人採用のために動いていた。あれこれあったが、意思と才能ある若者たちと出会えた。そして、ファンサイトのメンバーになるべく、これから彼らにいくつかのトレーニングを課すことになる。その1つがマーケティングの基礎を学んでもらうこと。さて、そのテキストをどれにしようかと思案し、候補に挙げたのが下記のもの。共通するのが、スポーツビジネスをベースにした書籍である。理由はシンプル(どうすれば勝てて儲かるか)で面白いから。
『マネー・ボール』マイケル・ルイス著
1990年代末、MLB(メジャーリーグ・ベースボール)オークランド・アスレチックスは資金不足から戦力が低下し、成績も惨憺たる状態。新任ゼネラルマネジャーのビリー・ビーンは、かつて将来を嘱望されながら夢破れてグラウンドを去った元選手。彼は野球界の常識を覆すデータ分析とマーケティング手法で球団改革を実行。チームを強豪へと変えていく。そして “奇跡”とも思える勝利が次々に起こる。ブラッド・ピット主演で映画化もされた。
『エスキモーに氷を売る』ジョン・スポールストラ著
著者のジョン・スポールストラは、NBA(全米バスケットボール協会)で観客動員数最下位だったニュージャージー・ネッツを、チケット収入伸び率1位にまで導いた人物である。本書では、バスケットというスポーツビジネスを通して商品を売るためにとった数々のマーケティング手法を学ぶことができる。特に注目すべき点は、与えられたビジネス条件を徹底的に分析し、持てる資源を最大限に生かした戦略であり、小さな材料も効果的に利用したことにある。とかくマーケティングというと企業は多額の予算を使った大きな戦略をとりたがるものだが、小さくてもファンに直接アプローチすることが効果的だと彼は知っていた。
『空気のつくり方』池田純著
2011年12月の球団創設から4年間で、観客動員数165%アップ、ファンクラブ会員10倍を記録などこれまでの成長の軌跡を仕掛けてきた横浜DeNAベイスターズ初代代表取締役社長、池田純氏がマーケティングの観点から解説。ベイスターズ改革の全貌をまとめた良書だ。
この3冊に共通する考え方がある。3つほどにまとめてみた。
1.自社製品(選手、野球・バスケのコンテンツの魅力)を最大限に活用し、興味を持っている顧客(ファン)を大事にしていること。
これを実践している会社(球団)は、意外と少ない。大多数の会社は、新規!新規!新規を取ってなんぼの世界。新規からの売上が、既存からのアップセルよりも価値があると思い込んでいる。これまで僕自身関わってきた企業の実際の数字をみると、営業活動、マーケティング活動の60~80%が新規顧客の獲得につぎ込まれていた。しかし、売上実態としては新規30%から40%、既存顧客60%から70%である。成功への足がかりは既存客(ファン)が肝なのだ。
2.顧客(ファン)の気持ちを大事にし、誠意を持って対応していること。
既存顧客はもちろん、一度でも自社の製品に興味を持ったことがある見込み顧客、以前は既存顧客であったが今は取引のない顧客まで、常に情報を把握しコンタクトを取れる状態にしている。
3.アプローチする市場、グループを絞っていること。
自社の商品やサービスの弱みと強みをきちんと把握し、アプローチする市場を絞る。ポイントは既存顧客(ファン)の活用。既存顧客にアプローチすることで、自社の顧客特性、商品の市場性、有望市場、セグメントなど、新規顧客獲得戦略策定のための良質な分析データを得ることができている。結果として、既存顧客へのアプローチは高い成果を上げている。
商品を売るには、顧客にとっての『価値』から考え、この「価値(ベネフィット)」を出発点に、誰に売るかという「ターゲティング」、競合より高い価値を提供する「差別化」、価値を届ける手段である「4P(Product/Price/Place/Promotion)」という流れを理解することがポイントだ。
ファンサイトの考え方を構築する際に、とても参考になった書籍ばかりである。機会があれば、一読されることをおすすめする。さてさて、これから若者たちとのマーケティング塾が始まる。