ファンランドへようこそ。
ファンサイト有限会社、取締役の川村勇気です。
2週間早いですね。
ファンサイトでいま私が担当しているのは主に新規開拓やアライアンス、新規事業の企画などのフロントラインなので、組織の窓口として外部の方とお話しする機会は本当に増えました。
その中でよく聞かれるのが「事業を拡大したいとは思いませんか」というもの。
もちろん案件はないよりあった方がいいに決まってるし、余裕ぶっていられるほど仕事を選べる状態でもないのは確かです。
弊社と似たような規模の制作会社であれば、生き残っていくためには、とりあえず請けられる仕事はすべて受ける、という方針のもと、営業活動にいそしんでいる企業は少なくないでしょう。
ただ、私がこの仕事をするにあたって決めていることのひとつに「営業会社にはならない」というものがあります。
海外ではどうなのか詳しくは知りませんが、日本ほどエージェンシー業があふれかえっている国はないのではないでしょうか。
ホームページだけでなく、SNS運用やセールスプロモーションなどのイベント、動画などのすべてを「ワンストップでご用命いただけます」と喧伝し、実際はそのほとんどを外注でしつらえて納品している営業会社が、いま日本には山のようにあります。
さらに、そこから制作業務を受注した企業が、インハウスでまかなうことのできないクリエイティブをさらに下請けに出す…という多重構造が常態化しています。
こうした商習慣は、無駄にリソースを自社内に抱えるよりは、言葉や企画書のうまいプロデューサー(という営業マン)だけを稼働させ、案件によって発注先をセレクトするという座組がもっとも効率的となるため、いまや「自称・広告代理店」の営業会社が巷にあふれかえるようになりました。
また大手のナショナル・クライアントの中には、定期的な異動や減点方式の評価基準が災いして、マーケ担当者に自身でディレクションをする動機付けがまったくはたらかないため、エージェンシーの「ワンストップ」という言葉に弱く、利益の確保よりも目の前のコンフォート・タスクを優先する傾向が強くなっています。
結果的に、オリンピックや万博でニュースになるような「中抜き」が日常的におこなわれ、いつまでたっても日本の生産性があがらない要因のひとつとなっています。
こうした問題の根本には「いちど相談を受けたら、なにがなんでも自社の利益を確保すべし」という考え方があります。
たとえば、S社から相談を受けたA社が、自社で請けられない仕事があった場合、付き合いのあるB社に案件として紹介するようなことは、珍しくないでしょう。
普通に考えれば、シンプルな「紹介」として、その業務だけはS社からB社に発注することが合理的に思えますが、実際のところそういったケースはごく稀であり、ほとんどの場合がB社の見積書にA社の「営業手数料10%」が計上され、S社に請求されます。
ここ最近では「直接取引(通称「直クラ」)」を増やしていこうという趣も見られるようになってきましたが、根強いエンドクライアント(この言葉も多重請負が生んだもの)の要望で、やはりまだ大手の営業会社がフロントに立つことが多いのが現状です。
この構造のデメリットは、まず利益率がどんどん下がっていく、ということです。
営業会社は「進行管理」という謎の仕事として、利益は10%から、多くても20%ほどしか計上できないため、取り扱う金額が大きくても、原価をのぞいた粗利はたかが知れています。
下請け、孫請け以下は言うまでもなく、実際に納品を担当するクリエイティブ会社やフリーランスの報酬はきわめて安くなるため、クオリティが上がるはずもありません。
各会社の利益を載せている分、エンドクライアントの負担は大きくなりますが、マーケティングに使える企業の予算には原資があるため、結果的には質の下がったクリエイティブが納品され、本当にすべき施策に充てる予算を溶かしながらダンピングが進んでいく、という、発注側・受注側双方にとって負のスパイラルが進んでいくことになります。
もちろん、中間マージンすべてが悪いというわけではありません。
案件によっては、ハブとなるプロジェクト・マネージャーが必要になるものもありますし、短期間で複数社からの請求に必要な取引先の口座登録ができないケースもあると思います。
ただ、実態のない営業会社ほど、ホームページには「川上から川下まで」のようなキラキラした言葉が並んでいますが、実際は御用聞きのような仕事ばかり(通称「伝書鳩」)で、見た目の華やかさとは大きく乖離しています。
一方で、この業界では実績とセルフブランディングが生命線になるため、常に「あの案件、俺がやった」と吹聴する人材が後を絶たず、実は現場で弁当を配っていただけで、一緒に仕事をするとあっという間にメッキがはがれる、なんてことも珍しくありません(通称「アレオレ詐欺」)。
ファンサイトでは、Web制作以外のクリエイティブ、動画や印刷物などの案件を相談され、取り扱うことも多々ありますが、請けるのはあくまでインハウスでディレクションができるものに限っています。
また、それ以外の、組織として納品することが求められるようなクリエイティブについては、積極的にご紹介を勧め、直接取引をしていただくようにしています。
ファンサイトは当面、何百人~数千人の規模の会社にするつもりはありませんし、年商〇億円を目指すこともありません。
ただ、「生産性」にはとことんこだわりたいと願っており、取り急ぎ目下の3か年で「社員一人当たりの平均利益1千万円(年間)」を超えることを目指しています。
これは「Make Money!お金儲けをしよう」というよりは、国内の業界に蔓延してしまった多重構造から距離を置く、というメッセージでもあり、「楽しくない仕事はしたくない」というサステナブルの姿勢でもあります。
私個人この二十余年の間、テレビ局から広告代理店、オリパラやプラットフォームなど、さまざまなコミュニケーション領域で仕事をしてきましたが、やはり自分たちでなにかを生み出していないと、仕事は楽しくありませんでした。
そしてその「楽しい」がなければ、大きな金額を動かすことはできても、大きな利益を生むことは難しいと考えています。
結果的にそれがクライアントへの効率的・効果的なコミュニケーション手段の提供となり、顧客に最大価値を届けることにつながるのだと、今は心の底から断言することができます。
最後まで読んでくださったみなさん、「ワンストップ」という言葉に惑わされることなく、あなたにとってベストなオートクチュールを選ぶ楽しさを、ぜひ忘れないでいただけたら幸いです。
ファンサイト有限会社はWebサイト、SNS運用、オウンドメディアなど、デジタルにまつわるコミュニケーションのご相談を随時受け付けております。
自社の発信に課題感をお持ちの方は、お気軽にご相談ください。