
私は昔から漬物が大好きです。
中でも母が漬けてくれるきゅうりのぬか浅漬けが、大抵は食卓にあるなかで育ったので、今でもおいしい漬物には目がありません。
ただここ数年食品に対する勉強を自分なりにしてきたなかで、市販の漬物は添加物のオンパレードなのだということを残念ながら知ってしまったので、スーパーでもほとんど買わずに素通りするような現状だったのです。
そんなある日、いつも仲良くしている相模湖のおだやか家の女将 はるさんが、つい先日お亡くなりになった佐藤初女さんが生前漬けていたぬかみそをおすそ分けしてくれたのです。
佐藤初女さんは生前、青森県弘前市のご自宅を、行き場を失った人や心を病んでしまった人を受け入れる「森のイスキア」という施設を1983年から開設。
なんと非営利で、まごころをこめたお食事で癒やして病んだ人達の心を癒やし、そして再び送り出すという活動を30年以上に渡って実践された素晴らしい方です。
そんな活動を続けながら、ご高齢にも関わらず執筆活動はじめ全国での講演会などを精力的に行われてきました。
昨年友人が横浜で開催してくれた講演会を聞きに行きましたが、その時はかなりお疲れのようで少し心配だったのですが、つい先日亡くなられたというニュースに、最後にひと目お会いできて本当によかったと思いました。
そんな初女さんの生前、前述したおだやか家のはるさんが会いに行った時に分けてもらった糠味噌を、今回私が形見分けとしていただいたのです。
人間の体には「常在菌」といって普段から住み着いている多数の菌があるそうなのですが、糠味噌を付けるなかでその常在菌もぬか床に入り他の菌とも交わって総合的な味になるとのこと。
言ってみれば、初女さんが生前大事に育てていたぬか床に、はるさんや妻や私の常在菌が混ざり合った味になるのです。
糠味噌は毎日朝晩ひっくり返して、菌たちに空気を吸わせてあげることが大事なのだと聞きました。
まだ今は馴染ませているところですが、明日くらいには準備ができるはず。
人生のほとんどの時間を、利他のために捧げた初女さんの思いがこのぬか床に入っている。
少しでもその高みに近づけるように、私も毎日声をかけ、愛をこめてこのぬか床を守っていこうと思います。