ご存じレジス・マッケナの本を眺めていましたら、「見えない競争相手」という文章に出会いました。それを紹介しますと(1)変化(2)変化への抵抗(3)教育された顧客(4)顧客のこころ(5)量産商品思考(6)大企業病(7)連鎖の切断(8)製品概念(9)思いがけない変化(10)自分自身と10の競争相手を上げています。
いずれも含蓄の深い指摘だと感銘した次第です。
これらについては、ご関心をもたれる皆さんには本をお読みください、いうことですが、なかでもとくに現場に係わる私たちが日々実感するのは、「変化への抵抗」ではないでしょうか。
先般、ある企業のコミュニケーション戦略についての企画コンペがあり、幸いにして私どもで指名を頂きました。それはそれでいいのですが、実施の検討段階に入ると大きな壁は、現場担当者の保守性です。おそらくこれはトップもしくは管理者層が感じている「危機」について同レベルには現場は意識していないことにあるのではないか、と思われます。どうも私の経験に照らしても、現場は、変化に対する波風が組織にもたらす面倒に対して、本能的に逃げたい気持ちが強いため、従来方法に逃げ込みたい習性が強くあるようです。
このことは恐らく企業倫理が問題とされたいくつかの不祥事の根っこにもあるものではないかとも思いかなり企業経営においては深刻な問題でしょう。
とりわけ顧客志向がマーケティングの基本となってきているこれからにあって、現場の持つこうした保守性とそうした性向に依存する問題発見についての感度の低さ、消極的な思考能力は、とりわけ「顧客接点」での情報のやりとりはむろん受容される情報の質について多大の問題を招きそうです。それではどうすればよいか、一つは変化への対応について企業文化として確立することではないか、そしてさらに重要なのは「経験知」についての視点の変更ではないか、と思います。
ここでふと思い出すのは「不思議な国のアリス」が「レッスンって忘れ続ける(LESS ON)ことよ」と語っていたことです。変化の加速する時代にあっては、ケッコウ示唆に富んでいるセリフだと思いませんか?
* レジス・マッケナ「ザ・マーケティング」ダイヤモンド社刊