第119回「消費者は品質の変化に案外鈍感」

私たちは品質について、結構シビアに考えていると思っていました。
しかし、以外や鈍感であるというショックな消費者調査がハーバードビジネスレビュー7月号(ダイヤモンド社刊)に紹介されています。

それによると、12年間にわたって46分野241種類の製品について実際の品質と消費者が知覚している品質との関係について調べたところ、消費者が品質の正しい実態を認識するのに平均5~7年かかることが判明したとのこと。
これは米国「コンシューマーレポート」誌の格付けと3万人を越える消費者を対象に年次調査を実施した結果だそうです。
こうした品質への知覚は製品によって異なり、冷蔵庫の品質変化が消費者に正しく評価されるまでに7,1年、タイヤの場合は9,5年、歯磨き粉では3,9年ということですが、いずれにしろ消費者の認識に品質の正しい実態が反映されるのには 平均5年~7年かかる。
また消費者は品質の向上よりは低下を早く感じ取るが、評判の高いブランドの場合、逆に向上に敏感で低下に気づくのが遅いと。
皆さまは、こうした「事実」をどのようにお考えでしょうか?

ミートホープ社の偽装表示が、内部告発が出るまでは長い間見過ごされていた事実などと併せて考えると身近な製品の品質でも品質低下は知覚しづらいのかも?と、私は妙に納得しました。
この報告書は、生産者がコストダウンを考えた場合、ある程度の品質低下を実践しても、消費者が認知するには時間が掛かるためかんたんに誤魔化すことができることを教えてくれています。
いまや製品寿命が短くなる傾向にあるご時世です。
5年、6年は、決して短いとは言えません。
競争が常態のなか、価格破壊のためにローコスト化を志向し、そのためのものづくり技術が精緻になるにつれ、消費者は知らぬ間に品質劣化の商品を掴まされる可能性も大きくなるかもしれません。
こうしたことには消費者は、もはや、なすすべを持たない弱い立場です。

「安かろう、悪かろう」で消費者を裏切ったら市場から排除されるというのは幻想で、いまやうまく裏切ったら儲かるということにもなってきそうです。
インターネットが普及し情報のヒエラルキーが崩れるとも言われますが、果たしてそうか?ものづくりの情報は、企業ノウハウとして秘匿、寡占化され、公開どころではないでしょう。

情報格差が解消されて市場のリーダーシップが企業から離れて消費者が主役となることなどは本当に実現するでしょうか?
この品質に関するレポートを極めて倫理観の高い企業が、悪用することなく、真の暮らしの向上を考えて利用して頂きたいと願う次第。
良心をつねに鼓舞する企業の成長を望むばかりです。

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