徒然草

2019年01月17日第86回 TAXI

 その日、朝から色々と忙しく、すべての予定が間断なく続き、移動距離も結構長かったので、一日に数度もタクシーを利用しました。決して良い忙しさでないのは、これまでの経験から解ります。少し焦るような苛立ち。
 その苛立ちを緩和させてくれたのが、タクシードライバーでした。運輸省相手に訴訟を起こし、当時は業界の異端とも言われた大手グループのクルマに、たまたま乗車した僕を、バックミラー越しに見ているのかどうか、ほどよい雰囲気をつくってくださるのでした。

 無論、個人差もあるでしょうし、たまたま幸運だったのかもしれません。なかにはハイヤーのようなドアの開閉サービスを嫌がる方もいるでしょうし、「好み」の問題もあります。ただ、雑に扱われるより心を配っていただいた方がよいと思うのが人の心。「安心・安全・『快適』を」とのHP記載の通りに会社は概ね運営されているのでしょうし、スタッフにそのサービスポリシーが浸透している点も感心させられるのです。

 朝から少しよい思いをして、そこでの仕事を終えた午後、次の移動先に向かうため最寄りの駅までタクシーを呼んでもらうことになりました。5分程度で来るはずが、なかなか来ず、寒さの中立つ僕に、通りかかった知人が声をかけてくださいました。「駅までだったら、送っていきますよ。」
 「ありがとうございます。でもクルマ待っているので。」と、立ち話をすることになりました。どれくらい話したでしょうか、彼も心配して周囲を一緒に探すことに。もしかしたら待っている場所が違うのかも…5メートルほど離れた場所でクルマは待機していました。
 「お待たせしましたか?すみません。少し離れた場所で待ってしまっていて…。」恐縮して行き先を告げました。
 「待っていたなんて嘘だ。こっちは15分も前に来ていた。たった今、来たのだろう。」ドライバーの一言に耳を疑いました。

 普段なら無視するのですが、この日は言い返しました。「ずっと僕も待っていました。周囲を見なかったことに非はあるかもしれませんが、嘘つき呼ばわりは酷いと思いますよ。なんなら証人もいます。」「いや、嘘だ。」その後何度も繰り返すドライバーに堪忍袋の緒が切れました。用意していたお札を一枚おいて、赤信号で止まった瞬間ドアを開けました。もう乗っていられません。
 それにしてもタクシーという乗り物について考えさせられる一日でした。業界内でここまで差があるとは…。この業界が再編されることは間違いないことを確信しました。他業界からの参入もあるでしょう。規制はモラルや秩序を守るためにあり、怠惰な事業者を擁護するためにあるわけではないことは明確です。冷たい風の中、まさか歩く羽目になるとは…。「人のふり見て…」だな、と予定より30分以上遅れて電車に乗るのでした。

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執筆者

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南谷 康宗

経営家・個人投資家・事業戦略家

慶應義塾大学法学部卒
幼少を欧州で過ごし、帰国後サッカーに没頭。

中学からエスカレーター校に入学し、順調にスポイルされ大学卒業。 10年の金融機
関勤務を経て独立。
現在は複数社で役員を務め経営に携わるとともに、自ら投資家としても事業に参画。

クライアントの依頼に応じて、事業ごとの戦略策定や起業にも携わる。
小さな成功と大きな失敗を繰り返し、不惑40歳を超えても迷い続ける人生の旅人。

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