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第962号『普段使いのグラスを磨いた』

7月の最後の休日、普段使いのグラスを磨いた。
ほぼ毎朝、水を飲むことから一日が始まる。グラスに水を注ぐ。そして朝日に向かってグラスを翳し、呪文を唱える。「今日一日、ご機嫌に過ごせますように」と、願いを込めて一気に飲む。こうして始める一日のほうが、そうではない一日より圧倒的に上手くゆく。

このグラスも、日々使っているから徐々に光沢が鈍くなる。
以前、なにげなく手にした雑誌で「グラスの磨き方」、という記事を見た。うっすらと残る記憶をたどりながら自分でもやってみることにした。

まずは、レモンの皮でグラス全体をこする。さらに、薄く洗剤を溶かしたぬるま湯でレモン汁と油汚れを洗い流し、乾いた布で磨く。キッュ、キッュ、キッュ、クゥォ、クゥォ、クゥォ。気持ちのいい音が響く。グラスから、磨く手から、布から、まるごと、音が身体と共鳴して響いてくる。ピカピカに磨き上げたグラスをそっとテーブルに置く。レモンのさわやかな香りが部屋中にひろがる中、キラキラと輝き、いつものグラスとは違うモノのように思えた。嬉しくなる。余裕のようなものが生まれてくる。

この気分の良さは何だろう?

サラリーマンをしていたころ、TVで「サザエさん」が始まる時間になると、決まって靴を磨いていた。月曜日の朝の憂鬱さから、なんとか逃れようとしていたのだ。靴をピカピカに磨いていると不思議に翌日、会社に行くことがそれほど苦ではなくなっていた。きっと、靴を磨くことで心の準備ができ、ほんの少し余裕が生まれたのだろう。

好きな詩がある。
坂村真民の『鈍刀を磨く』という詩を口ずさむ。

 鈍刀をいくら磨いても
 無駄なことだというが
 何もそんなことばに
 耳を貸す必要はない
 せっせと磨くのだ
 刀は光らないかも知れないが
 磨く本人が変わってくる
 つまり刀がすまぬすまぬと言いながら
 磨く本人を
 光るものにしてくれるのだ
 そこが甚深微妙の世界だ
 だからせっせと磨くのだ

磨き終えたグラスを朝日に翳してみる。キラキラと光る水をなみなみと入れ、呪文を唱え一気に飲む。
よし、今日も頑張るか!

【夏休み期間のお知らせ】
例年通り、ファンサイト通信も夏休みをいただきます。
8月12日(金)と8月19日(金)の2回。
次号開始は、8月26日(金)からの配信予定です。
それでは皆様、素敵な夏休みをお楽しみください。

ファンサイト有限会社代表 川村隆一

1件のフィードバック

  1. 今日もすてきな言葉をありがとうございます。

    なんと、刀じゃなくて、自分が磨かれるのか!と目から鱗が落ちました。

    実に感性の豊かな詩ですね。

    ちなみに自分、釣りをするので魚を捌くことが多く、マイ包丁を持っております。
    たまに、研ぎます。研ぐと包丁の先が光ってきて、それだけで嬉しくなります。ついでに家の包丁も研いだりします。そうすると嫁さんに褒められて嬉しくなります。

    何かを磨くことは、
    自分も、また磨かれるんだと、気づきました。

    またひとつ、豊かな人生を知りました。ありがとうございます。

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