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第90号『こだわり』

(こだわり)ということばが溢れている。

少し早い時間だがランチを食べようと、最近出来た有名和食料理の店に入った。
照明や内装も凝っている。
ランチメニューから一品選び、注文した。
ウエィターは、料理の用意に20分ほど時間がかかると言う。

しばらく待つ。
客はまだ、まばらである。
30分は待たされたか。
そうして、うやうやしく出てきた料理は、飾り付けも皿も見事で、見栄えのするものであった。
30分もランチで待たされただけのことはあるな、と思った。

料理を口に運ぶ。
ふと目をやると、メインの料理の添え付けのかぼちゃの切り口が、からからに乾いている。
明らかに電子レンジで暖めたものだ、とわかった。
なるほど、この店は待たせることで(こだわり)を演出しているのだなと理解した。
味など、もうどうでもいい気分になり食事を終えた。
会計のレジに向かうと店の入り口のは、長蛇の列が出来ていた。
客が並び、それを見てまた客が並ぶ、(流行る店)はこうして作られる。

先月、久々の休暇を南房総、千倉町で過ごした。

インターネットで見つけた宿「バードランド」は太平洋を望む高台にあり、花畑に囲まれていた。
露天風呂があり、いくつか椅子が置かれた共有スペースが点在する。
妙な言い方であるが、宿のあちらこちらにある凹みが気に入った。

オーナーの中野渡さんとお話しすることができた。
中野渡さんはもともと半導体メーカーに勤めていたが、十数年前、脱サラしてペンション経営を始めたという。

翌日、千倉周辺をぶらぶらしたいと思い尋ねた。

中野渡さんの郷里は偶然にも私と同じ青森である。
千倉に移民?した身である。
だから、地元贔屓ではなく、ご自身が納得したという店を紹介してくれた。

最初に訪れたのは、坂の中腹にあり、その傾斜に這うように建つ、隠れ家のような店「grass-b」。
小さな扉を開けると、外観からは想像もつかない広さである。
温室のようなガラス天井と三段のフロアーに分かれ、その下段にハーブが所狭しと植えられている。
そのハーブを使った料理を数品食べた。
どれもハーブがもつ自然の味わいとgrass-bのご主人の主張があった。
そして、中でもバシルのパスタは少し苦味があるが美味い。
久々に食べ物の力を感じた。

次に探し、行ったのは千倉町の隣村、三芳村にあるハム屋「セントシュバイン」。
この店のスモークレバーとペッパッーハムを食べて驚いた。
薫製の深いコクと香りが肉の旨味を引立てている。
そして、どうにも赤ワインが飲みたくなった。

オーナーの松苗氏の手作りハムとソーセージの歴史は1987 年に始まる。
その彼が、やはり手作りで制作しているガリ版刷りの情報誌がまたいい。

一節をお借りする。
——————————2003年12月号 原文まま

何か夢がありますか?
いま思っている夢は何?
何をやってみたいの?
20年前、私が思っていたことは、「ハム屋になって自分の工房を持って、レストランをやって、できればペンションもやってみたい。」
今、その夢は現実になっています。
そしてそれを運営していくのに日々の生活の8割を費やしています。
「さて、これからどうするんだ?」と自問することが多くなりました。
勿論、子供を育て、自立させ、借金を返済し、そしてまた振り出しのスタート地点に戻るのであろうか。
毎日、ハム・ソーセージを作っているのは楽しい。
肉処理なども本当に楽しい。
ソーセージのカッターを回す時の緊張感はいつも新鮮だ。
でも、いつまでやれるのだろうか、とフト不安になります。
今のペースでやっていく自信がなくなってきた。
息子に後を継がせようとは初めから考えていない。
私一代で終わっていいと思っている。
むしろそうあるべきだと思うようになった。
ハムやソーセージを作るには、おいしいものを作りたい、という思いがなくてはできない。
その思いや情熱がなくなったら、セントシュバインも廃業しようと決めています。
あと何年やれるかわかりませんが、全力でまっとうしたいです。
—————————ここまで

「バードランド」のオーナー、中野渡さんに教えて頂いたのに、「grass-b」も「セントシュバイン」も人に教えたくて、教えたくないと思った。
そして、小さな町に住み、大きなこだわりを持つ彼らに共感した。

自分もあと何年やれるかわらなが、仕事にこだわり、全力でまっとうしたい。

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