決定とは、リスクのともなう判断のことである。
桐野夏生原作・平山秀之監督の映画「アウト」はリスクを冒しても手に入れようとした、4人の女たちの解放闘争と自立の物語でもある。
原田美枝子(香取役)はセックスレスで失業中の夫と自活できずにパラサイトをきめこむ息子を持つ主婦。
賠償美津子(吾妻役)は痴呆になりかけている寝たきりの姑を抱える未亡人。
室井滋(城之内役)は装飾品、洋服、外車とブランドものにとりつかれ、街金にまで手を出す独身。
西田尚美(山本役)は夫の暴力に苦しむ妊婦。
4人はパート仲間である。
ある日、暴力に苦しむ西田がネクタイで寝ている夫の首を絞め、殺す。
相談された原田は、出産の近い西田に同情し死体を処理することになる。
もと銀行に勤めていたしっかりものの原田にお金を借りている弱みから、賠償も室井も死体をバラバラにし、処理することを手伝う。
荒唐無稽ではあるが、些細な出来事と細い根拠が紡がれ、そうして太く明確な事件になる。
それにしてもこの映画に登場する男たちは見栄えがよくない。
万引きする夫。
田舎でささやかな暮らしを願う街金業者。
存在感のない若者。
怖くないやくざ。
拳固で妻を殴る夫。
男の存在感がどこにもない映画である。
男はバラバラにされた。
そして、原田は夫と息子から、賠償は家を焼き家と姑から、室井はものから、西田は夫から開放された。
後半、警察へ自首する賠償の夢だったオーロラを見に残りの3人が真冬の北海道へと旅立つ。
途中、産気づいた西田は病院へ、そしてヒッチハイクで原田と室井は北海道からアラスカへ向かう。
なんと、拾ってくれたトラック運転手も女(吉田日出子)である。
もはや、夢の実現に男の手は借りないとでもいうように。
何処へ?
オーロラを見に。
それは、ありもしない幻の輝きを探す旅だとしても先へ進むしかないのか。
もはやこの国では、女たちも帰る場所を失ったようにも思えた。