【パンフレットから】
週末、細田守監督作品、映画『バケモノの子』を観た。
前作『おおかみこどもの雨と雪』から3年。
待ちに待った。
そして、期待に違わぬ出来だった。
細田作品のフィルムグラフィーである。
2006年『時をかける少女』(原作:筒井康隆)
2009年『サマーウォーズ』(原作:細田守)
2012年『おおかみこどもの雨と雪』(原作:細田守)
前作『おおかみこどもの雨と雪』同様、公開時期は夏、7月。
日常の生活から離れた、異次元の体験を味わうことのできる「夏休み」にふさわしい作品
だった。
今作も「人はどれだけ他人に対して、懸命に行動できるか」という、細田作品の根底に流
れるテーマが貫かれていた。
そして、人間の子とバケモノの男が繰り広げる成長物語を、アニメーション映画だからこ
そできることを随所にちりばめたファンタジーとして描かれていた。
細田作品を観て、毎回感じることがある。
それは、喜怒哀楽の感情すべてがフル回転で動員され、心と身体が熱くなり涙する。
気がつくと、自分の汚れた部分が洗い流されているようなデトックス感があるのだ。
雑誌か、あるいはFacebookで読んだのか忘れたが、監督自身、子どもが誕生したことで、
製作態度が変わったと発言していた。
続けて、こうも話している。
自分の家族の喜びは世界の家族の喜びであるかもしれないし、自分の家族の問題を解決で
きたら世界の家族の問題も解決できるかもしれない。
アニメーション映画という表現を使って世界の人びととつながれる、と。
細田守、は自分の身の回りを見つめることで社会を見ている監督だと思う。
監督は、「作品を観たあとに美味しいご飯が食べれる映画を作りたい」と書いていたこと
も記憶にある。
それは、映画そのものが公共のものであり、到達可能な理想を描くものであると信じてい
るからであろう。
映画『バケモノの子』を観て「人はどれだけ他人に対して、懸命に行動できるか」という
想いと同時に、世の中を少しずつでも良い方に変えていきたいというポジティブなエネル
ギーも浴びた。
そして同時に、そのあまりにストレートで迷いのない製作態度に、次第に大きく成長する
夏の入道雲を思わせる高揚感を味わった。