第51号『ラディカルな意志のスタイル』

   
内容か様式かと、比べれば、あるいは主題か形式かと、問われれば、様式や形式のほうがはるかに重要であることなど、わかりきっている。

例えばアキ・カウリスマキとタランティーノを、中島みゆきとユーミンを、野茂英雄と松井秀喜との、そのスタイルこそが語られなければならないのである。
わたしたちはサルトルとレヴィ・ストロースを、手塚治虫と宮崎駿を、村上龍と村上春樹をそのように比較して見ているのである。
長谷川等伯、デヴィッド・ボウイ、ミシェル・フーコー、利休、ジャクソン・ポロック、ビョーク、ルキーノ・ビスコンティ、増村保造、モネ、・・・。
わたしたちは、これらをそれぞれが持つスタイルにおいて、その在り様を見抜いてきたのだ。

だから、正直なところ今年のメジャーリーグも松井秀喜よりも野茂英雄が気になる。

8年間で250試合に登板し、メジャー通算98勝、1625奪三振、しかも1000奪三振達成はあのランディ・ジョンソンを抜いてメジャー史上3番目の速さで到達したのである。
(今年、開幕投手となり、ダイアモンドバックスとの第1戦完封勝利、これで通算99勝!!!)
近鉄時代、仰木監督から現役時代ピッチャーだった鈴木監督に変わり、野茂の大阪成城工業高校時代からの投法であるトルネード投法を止めさせようとしたことが、メジャーリーグにむかわせた原因の1つだと聞いたことがある。

自分のスタイルへのこだわり。

たしかにメジャーでの内容は素晴らしい、でもその内容を支えているのは、彼が貫いている一本の太くて頑丈な柱のような意志である。
今年も思いっきり打者に向かっていくあのトルネード投法が観たい。

これまでに延べ9チームを渡り歩いてきた。
どこにいるかではなく、何をやるかだ。
そして昨年メジャーのスタートを切ったドジャーズにもどり今年、100勝目を目指す。

開幕戦勝利をおさめ、100勝目は次回4月5日対パドレス戦で達成するかもしれない。
ともあれ、スタイルこそがラディカルな意志をもっているということを彼が教えてくれた。

野茂の寡黙な華麗さにはおよびもつかないがファンサイトも2年目、はたしてどこまで自分のスタイルにこだわり続けることができるか。
しかも、ラディカルな意志のスタイルとして・・・

もう、やるっきゃないでしょ。

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