第312号『些細な方法』

【千の粒の実】
【千の粒の実】

朝、目が覚めると、なんとも息苦しい。
原因はわかっている。

ここ1ヶ月の間に、幸運にも立て続けにプレゼンが通った。
そして、忙しさが増し加わった。
身内の祭事や壊れたステレオプレーヤーを修理に出さなければならないし、PCを開ければ返事を書かかなくてはならないメールが並ぶ。
その上、もうすぐクリスマスツリーも飾らなければならない。
仕事の上でも生活の上でも、事の大小を問わず、やらなければならない問題が山積し、身動き出来ない状態になっていた。

何から手を着ければいいのか途方に暮れた。
「自分が本来やるべきことは何か」と、もっともらしいことを自分自身に問いかけてみたりもした。
なんとなく、一日一日と先送りしながら気分は暗く、重くなるばかりであった。
不思議なもので、こんな状態の時に限って小説を読みたくなったり、深夜のTV番組を見入ったりもする。
当然のごとく、事態は更に混迷していった。
小説を読もうと本箱を眺めている時、書籍と一緒に並べていたノートの束に目がいった。
手に取り、パラパラとページを捲る。
そこには数年前に書いた日々の行動予定が記されている。
内容はその日やるべきこと、例えばこんな具合にである。

□ 歯を磨く
□ 水を飲む
□ ストレッチをする
□ 筋トレをする
□ メールをチェックする
□ 朝食を摂る
□ ファンサイト通信用テキストを書く
□ ●●氏にTELアポ確認
□ ●●さんと撮影打ち合わせ
□ 等々・・・

事の大小に関わらず、チェックボックスを付け、その日やるべき項目を順に並べて書くだけである。
これだと思った。
早速、忘れていたこの方法を再開してみた。
事の大小に関わりなく、その日一日するべき項目を書いてみた。
書き終わると、なんとなくスッキリとした。
そして、これで動けるなと思った。

身動きとれない状況を動かすきっかけは、「本来、何をなすべきか」と大上段に構えた正論などではなく、たった1枚の紙に、その日一日、すべきことを書くことだった。
この些細な事実に驚き、素直に感動できた。

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