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第212号『ホノルルマラソンの走り方−9』

【光】
【光】

町並みが途絶え、少し高い位置にある国道から、左手に太平洋が見え隠れする。
10キロ地点から、14キロの折り返し点の乙浜の交差点までは、だらだらとした緩やかな坂道を下る。
足が勝手に動く。
なんだかスピードも心なしか上がっている。
うん、快調だ。
さっきまでの不安がうそのようだ。
折り返し点でタイムは1時間40分。
10キロから14キロまで、1キロを5分30秒で走ったことになる。
後残り、7キロ。
1キロを7分で走ってもほぼ50分。
この調子なら、2時間15、6分でゴールできる。

しかし、事態は同じ延長線には推移しない。
折り返し点を過ぎ、今度は海と平行に防波堤沿いに走る。
折り返したとたん、波が、砂混じりの風が顔にも体にも降り掛かる。
昨夜通過した台風は過ぎ去ったものの、その余韻の風が十分に威力を発揮している。
体が風で押され、前進を拒む。
道がまるで、海の中にあるように感じた。
フランスの幻想的な童話作家、シュペルヴィエルの『海に住む少女』の冒頭のシーンが頭のなかに思い浮かぶ。
「この海に浮かぶ道路は、いったいどうやって造ったのでしょう。どんな建築家の助けを得て、どんな水夫が水深六千メートルもある沖合い、大西洋のまっただなかに、道路を建設したのでしょう。」

15キロ地点を過ぎると、このコース、第2の難関、南房総千倉大橋を渡る。
1キロもない距離で10メートルの高低を上り下る。
この橋を渡りきると、『海の駅ちくら・海の王国』の少し茶褐色がかった建物が見えてきた。

風と、砂、そして時折降り掛かる波しぶきの中、残り3キロの地点まできた。
時計に目をやる。
2時間04分。
残り3キロを1キロ7分で走ってゴールのタイムは2時間25分。
体の節々がギリギリと音を立てているかのようだ。
もはや、スムーズな走り方など望むべくもない。
太腿も、膝も、腕も、肩も、背中も全ての器官がフル回転している。
2キロ地点の標識が見えた。
沿道には人垣ができ、声援を送ってくれる。
元気が出てくる。
チラリとゴールと書かれた横断幕が見える。
腕をふる、足を前にだす、腕をふる、足を前にだす、
腕をふる、足を前にだす。
ゴールがグングンと近づいてくる。
21.0975キロ。
タイム、2時間22分18秒。
後ろを振り向き、来た道に一礼した。

つづく

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