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第207号『ホノルルマラソンの走り方−4』

【和気清麻呂像】
【和気清麻呂像】

来週提出の企画書の作成、もう3週間も溜めていた売掛金、買掛金の計算などなど、ともかく順々に片付けるには訪問客と電話の少ない土曜日が最適だ。

そして夕方6時。
意を決してランニングシューズとウエアをバックに詰め、「稲荷湯」へと向かう。
さあ、いよいよ今日からランニング開始である。
のれんをくぐると、入口の扉に『シューズは脱衣場に持ち込まないでください』との貼り紙がある。
シューズが汗で蒸れ、悪臭を放つ、しかるに専用ラックに置くようにと。
なにごとにつけ、細かいところに気配りがあることが本格的な風情を醸しだすものだ。
たあいもないことだがなんだか、妙に感心した。
ともあれ、さすが皇居ランニングの起点でありメッカ、ランナーが数多く利用しているのだなと推測できた。

下駄箱に靴を入れ、木札の鍵を抜く。
戸を開けると女将が番台に座っている。
「入浴料は?」と訊ねる。
「430円です」と返ってきた。
いま、銭湯は430円もするのか。
「あの~、マラソンに行くのですが、荷物は預かってもらえますか?」、怖ず怖ずと尋ねた。
いつも聞かれているのか、慣れた口調で「ロッカーの鍵は預かりますよ」と。
入浴料を払い脱衣場に入る。
想像していたより、狭い。
ガラス越しにみえる風呂場にはお決まりの富士山のペンキ絵ではなく、シンプルなタイルが貼られていた。
もうすでに数名のランナーとおぼしき人たちが、手際よくランニングの身支度をしている。
空いているロッカーを探し、着替えをし、鍵を女将に預ける。
入口でランニングシューズに履き変え、夕暮れの街に飛び出した。

なんだか、不思議な気分である。
ランニングウェアを身にまとい、ランニングシューズを履いただけなのに、つい今しがた仕事をしていたオフィスもビルも街も、まったく違う世界に見える。
「変身~!」
ちょいと太めではあるが、まるで気分はスーパーマン、である。(^^!

「稲荷湯」を出て本郷通りから神田橋を渡り国税局の前を通り、内堀通りの信号を渡る。
和気清麻呂像のある竹橋の地下鉄口をスタート地点として、皇居のぐるり1周5キロを走る。
右手にお堀を眺めながら時計の針を反対に回ることにした。
スタート間もなく、毎日新聞社のあるパレスサイドビルを過ぎ、左に曲がる。
右手に国立近代美術館を見ながら、なだらかな坂道が続く。
首都高代官町入口脇の桜並木道をどんどん上る。
坂を上りきり、すぐ左に折れる。
少し走るとイギリス大使館が見える。
もう半蔵門はすぐだ。
坂道を息を切らしながら昇ったせいか、足取りが重かった。
しかし、半蔵門から眼下に広がるビル群の眺めは、じつに爽快な気分にさせる。
そして、ここからは下りになる。
国立劇場、最高裁判所を通り、桜田門まで一気に駆け下りる。
平坦なコースに変わり、松林のある広場を右に、左にはビルの林が続き、その間からチラリと東京駅の赤茶色が目に映る。
大手門を過ぎ、顔を表面に向けると、青銅色の和気清麻呂像がぽつりと見える。
あの像のあるところがスタート地点だ。
汗が噴き出す。
足が重い。
ゴールが遠い。
こうしてゼイゼイしながら、ようやく1周走り終えた。

時計に目を遣る。
タイムは43分28秒。
5キロを43分28秒、ということは10キロでは1時間27分。
40キロで6時間か。
これに疲労度を加味すれば、7~8時間。
42.195キロ。
おいおい、本当にゴールまで辿り着けるのかと、自問自答した。
日も翳り、街灯の下、なんとも心細い影が長く伸びていた。

つづく

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