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第189号『言葉の森で迷って』

【森】
【森】

人間にしろ、風景にしろ、深く分け入って見れば凡庸な通念など微塵もなく砕かれ、そして裏切られる。

かつて、まだ、世界遺産などという仰々しい名札が付く前、こんもりと青々繁る白神の森に分け入ったことがある。
実家から2時間ほどの場所にあるという心安さと、夏の開放感も手伝い気軽に出かけた。
遠目から眺めていた穏やかな涼やかさは、いとも簡単に裏切られた。

森に分け入ると、狂おしいほどの瘴気に気圧された。
生い茂る葉も、沸々と沸き立つ土塊の匂いも、凛々と立つブナやコナラから滴り落ちる樹液も青臭く、土臭く、生気溢るる世界がひろがっていた。
間違いなく森は、ひとつの生命体として息づいていた。

去年の9月に企画し、10月後半からこつこつと書き始めたテキストがひと塊のカタチになり、ようやく上梓することにあいなった。
タイトルは「企業ファンサイト入門 極楽クラブの秘密」。

言葉の森に迷い込んで半年、遠目から眺めていた時とは違う、それはまるで『風の谷のナウシカ』の腐界の森を思わせる世界がたち現れた。
それだけではない。
書き始めて程なく、言葉の森に棲む魔女にたぶらかされた。
それは例えば、ファンサイトの制作手順やマーケティングの基本概念など、ほぼ自明のこととして分かっていたことも、確かなことなどなんにも分かっていない。
こうした自明のこととしていた事柄が実は、根拠なき思い込みと過信であることに気付かされ、茫然自失となったことも一度や二度ではなかった。
その時の恐怖たるや・・・。

小さな野心など、とろりとした言葉の樹液に、こってりと絡め取れ、身動きできず、ただただ仮借なく時は過ぎていった。
果ては、もともと書くことなど最初からあったのかしらん。などと詮無いことが頭のなかを駆け巡りもした。
おそらく、こうしたことも言葉の森の魔女のせいであったのだろう。(^^!

ことほど左様に、地図もコンパスも持たず無謀にも、森に分け入ったはいいが、すぐさま樹海を彷徨う破目になった。
しかし、今回、出版元である日刊工業新聞社出版局書籍編集部、鈴木副部長をはじめとし、多くの友人たちからの励ましと助言のおかげで、なんとかこの森から這い出ることができた。
ちょいと大袈裟なもの言いではあるが、しかし、これが実感である。

鈴木氏からいただいた金言の1つである。
“本というのは、確かに文字が中心ではあるのですが、書いているときは文字表現の中で埋もれていく感覚になってしまいます。
ですが、実際に出来上がる本は、文字と言うよりは、「紙の上で作られた作品」です。“

今日、「紙の上で作られた作品」が書店にならぶ。

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