ー Web業界を泳ぐために ー
企業ウェブサイトの立ち上げに関わる人数も、数名から大掛かりなものになると数十名まで、多くの専門分野の方々が関わることになります。
以前手掛けたプロジェクトを例にお話します。
・プロデューサー(総合的な進行管理責任者)1名
・ディレクター(実務進行管理および現場スタッフの管理)1名
・チーフエディター(コンテンツ管理と企画進行管理)1名
・エディター(取材、テキスト作成等)2名
・デザイナー(レイアウト、アイコン等のデザイン制作)2名
・プログラマ(HTML,CGI,JavaScript等、コーディング業務)1名
・アシスタント(データ収集、取材準備等)1名
この時点で9名もの人が関わる中規模のものでした。
このプロジェクトは年間を通しての運営ということもあり、毎月の企画とともに人数も変動しましたが、ともかく多くの分野の方々によって企業ウェブサイトは支えれています。
そして、制作段階に入るまでには様々なコンテンツ案やデザインプランなどが企画会議のなかで何度も議論され、浮かんでは消えいきます。
そして、クライアントの意向と制作側の企画意図をすり合わせながら、絞り込まれた企画を実施に移します。
企画の実現性を考え、調査・取材をし、テキストや写真を誰に依頼してまとめていくかの割り振りをします。
デザイナーにはその意図を伝え、全体のレイアウトを依頼し、出来上がってきたデザインを正確に表現できるようプログラマにコーディング(HTML化など)を要請します。
こうして、様々な人の力を結集し完成したものがサイトにアップされるのです。
これら一連の作業を振り返ると、建築、映画製作、出版編集といったモノ作りと、基本は同じです。
ここで、ウェブサイト制作の流れを簡単に整理してみます。
【1】キックオフミーティングと企画
どんな仕事にもいえることでしょうが、方向性と段取りが最も大切です。
ここがグラついていては先に進めません。
もちろん、クライアントとの綿密な打ち合わせが必要なことは言うまでもありません。
このウェブサイトで「誰に、何を、どんなふうに」見せたいのかを徹底的に話し合います。
【2】ページ構成とリンクの設定(サイトマップ作り)
「誰に何を」がはっきりしたら、今度は全体の構成を考えます。
一般的にウェブサイトのユーザーは自分の興味のままにページを遷移していきます。
ここが、時系列順に追っていく本や映画と基本的に大きく異なるところです。
こうしたことも配慮し、ユーザーにどんな導線で見てもらうのがいいのかを考えながらページ構成とリンク設定を決めていきます。
そして、おおよその構成が決まったら一枚の大きな紙にその全体像を書いていきます。
この図はツリーと呼ばれる樹形図として表します。
この設計図のようなものは通常サイトマップと呼ばれています。
このとき、サイトに入れるコンテンツごとのファイル名も想定しながら設定していくと全容がつかみやすくなります。
また、ここで、FlashやCGIなど、通常使用するHTML以外の技術を用途によって組み込むかどうかの決定もしておく必要があります。
【3】サイトネーム、ロゴなどTOPページのデザインの決定
まずはTOPページのイメージを紙の描いてみます。
サイトマップが設計図のようなものだとすれば、TOPページは完成予想図のようなものです。
サイトのロゴマークやサイトネームなどもなるべく早い段階で設定することで、プロジェクトに参加するスタッフがウェブサイトの向かう方向性やイメージを共有しやすくなります。
また、このサイトマップ(設計図)とTOPデザイン(完成予想図)を基本案にしながらクライアントと打ち合わせをすることで、相互のぶれも少なくすることができます。
【4】レイアウトとプログラム
TOPデザインが決まり、ロゴマーク、イラスト、写真、テキストなどの必要な材料が揃ったらレイアウトに移ります。
また、このとき、FlashやCGIなどの技術は平行しながら進めていきます。
そして、デザインレイアウトとプログラムの両方の要素がそろった段階でクライアントに確認を取り、一気にブラウザに文字や絵を表示させるための貼り付け作業(コーディング)に移ります。
【5】動作確認とアップロード
表示画面のサイズが変わってもレイアウトの崩れはないか、リンクが正しく繋がっているか、FlashやCGIはきちんと作動しているか、こうした各項目がそれぞれWindowsとMacintoshのそれぞれで想定されるブラウザでチェックします。
そして、完成したファイルをサーバにアップロードしてようやく一連の作業が完了します。
こうして、見てくるとウェブサイトを作るにはたくさんの人と専門的な知識が必要だということがお分かりいただけたかと思います。
50歳を目の前にして、これからウェブサイトの専門知識をすべて一から身につけるにはあまりに高い頂を登るに等しいと、正直なところ怖じけずきました。
人にはそれぞれ、その分があり、出来る事と出来ない事がある。
一旦は諦めようと観念しました。
しかし、後も下もこれ以上行けないということは、つまりは前か上に進むより他にありません。
では、私にできる事がないかとウェブサイトの制作現場を改めて見回してみました。
ウェブサイトは企業の顔として会社案内や製品サービス案内、アニュアルレポート(財務年間報告書)など会社の重要なツールでありながら、そうした視点を意識して作られているものが少ないというこに気が付いたのです。
会社を正しく理解してもらうためのツールとして、どうあるべきかの提案が少ないと感じたのです。
いまや、ウェブサイトはインフラとしてほとんど誰もが使う道具です。
会社を正しく理解してもらうための施策を考慮し、その上で、マーケティング的にも有用な利用方法を提示することができれば、より的確なコミュニケーションが可能になると判断したのです。
であれば、私がこれまで会社案内、アニュアルレポート、社内報などの制作で得てきた知識や技術を運用しながらやれることは以外と多いのです。
企業にとってコミュニケーションと何か?
そしてその仕組みと何か?
これまでも仕事を通して考え続け、作り続けてきたことです。
多少、技術的なことに不安があるとしても、実現すべき目的にもっとも近い方法をプログラマやデザイナーと話し合いながら決めていけばいいだけのことです。
いまある自分はいまあるように自分が創り出したものです。
自分の限界を決めるのもまた自分でしかないのです。
どうしたいか、どうなりたいか。
人は自分の思ったことしかしません。
意志は方法を決定します。
この基本がしっかりとあれば、新しい世界に分け入るにしても十分に通用すると確信したのです。
次回につづく