第172号『50歳からの起業 – 2』

【DELL/INSPIRON-4000】
【DELL/INSPIRON-4000】

いま、私の仕事机の横に、壊れて動かなくなった一台のDELLのラップトップパソコン“INSPIRON‐4000“が置かれています。

2年前の暮れのことです。
スイッチを入れたまま、しかもフタを開けた状態で会議室のテーブルから自分の机へと移動しようとしました。
書類を脇の下に挟み、コーヒーカップを持ち、さらにこのノートパソコンを持っての移動です。
ヤバイと思った瞬間、予想通り?手が滑り(><)‥‥
すぐさま拾い上げ、再起動をかけてみました。
それからおよそ1時間、どんなことをしてみてもブラックホールのような暗黒の画面にはなんの変化もおこりませんでした。
幸い、DELLと平行してiBookも作動させていていたので、何とか最悪の事態だけは回避することができました。

翌日、サービスセンターで調べてもらうと、どうやら液晶画面とハードディスクが破損しているのではないかというのです。
電源をOFFにしていれば、まだ救われたのかもしれないが作動中に衝撃があるとハードディスクは簡単に傷ついてしまうのだという答えが返ってきました。
さらに、破損したディスクからデータを抜き出す専門のサルベージ会社に問い合わせてみると、まずは有料の事前調査をし、それから本格的な作業にとりかかるとのこと、しかもその料金も数十万円から百万円を超えることも珍しくないというのです。

このDELLと同じ価格帯の安いWindowsの機種はいくらでもあります。
でも、簡単に取り換えたくない理由がありました。
このDELLには思い出と思い入れがあったのです。

起業前に務めていた会社から退職金代わりにもらったのがこのDELLでした。

この会社は尊敬していた元上司が、自己破産から一念発起し立ち上げたものでした。
仕事の仕方、遊び方など本当にたくさんのことを学んだ先輩でした。
いわば、人生の師匠から「幹部として来て欲しい」との一言に心が動き参加した会社でした。
社長とその友人の取締役が営業担当、そして私が企画制作という役割でスタートしました。
しかし、3ヶ月が過ぎても一向に仕事らしい仕事が発生してくる気配がないのです。

潤沢な資金があってはじめたわけではありません。
当然のように給料の遅配、未払いが始まりました。
同じ船に乗っているのだから、このままでは沈むことになるのは火を見るよりあきらかです。
大学と高校に通う2人の息子たちの顔もちらつき、授業料や家のローンのことが頭をかすめました。

40歳も半ばを過ぎ、転職も2度や3度ではないし、逃げるわけにもいかない。
どうしたものかと思案にくれていました。
でも、一方できっと社長がなんとかしてくれるだろうと、なんとも暢気な気分でもいました。
もう一つ、なんとかなるかなと思っていた理由がありました。
実は、この会社で働く前の会社で、すでに進行していたプロジェクトが「極楽クラブ」だったのです。
そして、この年の4月には「極楽クラブ」がオープンしていました。
しかもオープンまもなく、会員数が3万人を越えるという素晴らしいスタートを飾ることができたサイトでした。
「いける」との予感が芽生え始めました。
この「極楽クラブ」の初入金で買ったのがDELLのラップトップパソコン“INSPIRON‐4000“だったのです。

では、それまでどうしていたか。
知人から借りたシャープのメビウスというPCで企画書や請求書を作っていました。
借りてほどなく、このメビウスには不具合があることに気がついたのです。
キーボードの「J」のキーが壊れていたのです。
実際、事実、実験、事情、自由・・・いかに「J」を使わずに企画書が書けるかと考えながら、キーを叩いていました。
例えば、自由はMIZUKARAと打ち、変換し、次にYOSIと打って変換するといった具合にです。
なるほど、JIYUUとはMIZUKARをYOSIとすることなのかと納得したりもしました。(笑)

考えてみれば、「極楽クラブ」は、私が勤めてきた前々職、前職、そしてこのファンサイトという3つの会社を跨いで、ずっとお付き合いをさせていただけた仕事でした。
仕事は会社に属するものです。
当然のことですが、無理矢理に持ち出せるものではありません。
その都度に話し合い、偶然の結果、私が担当することになった仕事でした。

もちろん、偶然も不思議もある種の必然がもたらすものだと思います。
しかし、その道筋を作っていただけたのは、クライアントの皆様の暖かいご支援とご尽力があってのことです。

ともかくも、状況は最悪でした。
でも、いつだってチャンスはピンチの顔をしてやってくるのです。

次回につづく

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