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第136号『戦略ある野心』

12日、bjリーグのトライアウトを見た。
日本初の男子プロバスケットボールリーグとして11月の開幕を目指すbjリーグの1次トライアウトが、神奈川県小田原市で、実施された。
この日、小田原市総合文化体育館では、356名もの野心溢れる若者たちがトライアウトに挑戦した。

午前中は、ボードタッチ、パス&シュート&ドリブル、1対1、シャトルランなど、基礎体力、技術を重視したテストが行われ、120名に減り、午後にはハーフコート、フルコートでの3対3や5対5など、実戦形式の選考でさらに62名まで絞り込まれた。
河内敏光コミッショナーは、「正直不安があったが、今回のトライアウト応募者総数は627名、実際参加された人数は関東会場:356名、関西会場:161名の計517名と、たくさんの『バスケがしたい』(bjリーグのスローガン)選手たちが来てくれた。
トライアウト受験者については、「前から知っている選手たちの実力は予想どおり。また光るものを持っている無名選手も何人か目に付いた。
今回の合格者から、少なくとも数名は開幕メンバーに入ってくるのではないか」と評価した。

しかし、なにかが足りないと感じた。
たとえば、それは基礎体力や身体能力といったフィジカルなものなのか、あるいは大きな声を出し続けるとか、派手な動きなどパフォーマンスによるものなのか判然としない。

ともあれバスケに関しては素人の自分が、いや、素人だからこそ、あえていうならば、「このレベルの選手でお客が喜ぶか?」との問いに、答えは「NO!」であった。

数日前、新聞で読んだ元マラソンランナー、中山竹通氏のことを思い出した。
88年ソウル、92年バルセロナ五輪でいずれも4位入賞。
その華々しい戦歴の始まりは苦難の連続だった。

走ることがなにより好きだった中学、高校時代、家の近くの野山を駆け回った。
しかし、インターハイとも国体とも無縁、実業団から声をかけられるはずもない。
経済的な余裕もなく大学進学は夢のまた夢。
苦労の末、就職したのは当時の国鉄の下請け会社、松本駅での雑務業だった。
来る日も来る日も掃除とお茶くみ、泥酔する客の汚物をモップで洗い流す暗澹たる思いにかられる毎日だった。

どん底から這い上がるには目立つしかない。
三年後、長野県縦断駅伝で驚異的なごぼう抜きを演じ、それが新聞にとりあげらた。
そして、クラブチーム富士通長野から声がかかった。
練習は仕事が終わった夕方からだったが、それでも自分にとっては天国に思えた。
さらに二年後、陸上界に華々しく参入したダイエーに入社、環境は一変した。
靴、ウエアは無料支給、練習も昼から。
こんな世界があったのかと心の底から驚いたという。
これなら自分にも出来る。
かすかな自信が確信に変わった。

実業団に入って感じたのは、エスカレーター式に育ってきたエリート選手たちの一応にマニュアルの中に小さく納まっている様だった。
長い間、手取り足取り教わってきたことで自分自身の頭で考えなくなる。
監督から練習メニューをもらっても自分で工夫する術を知らない。

かつて、掃除用具を手に線路からホームを見上げると様々な人生がみえた。
ごみを撒き散らかし、けんかをし、泥酔して寝てしまう乗客。
何がいつ起こるかわからない。
マニュアルなど役に立たない世界で、臨機応変に対応するしかなかった。

ソウル五輪代表を決める1987年の福岡国際マラソン。
5キロを14分35秒で入り、20キロまでの5キロを14分台の驚異的なスピードで駆け抜けた。
そんなペースで走るなんて無謀としか思われない時代である。
しかも、五輪出場を賭けた大事なレース、何を考えているのかと思われたはずだ。

しかし、計算はあった。
マニュアルを壊せば他の選手が動揺する。
予想通り、誰ひとりついてこれずレースは楽勝だった。
中山は続けて言う。
競技で大事なのは相手の心理を読み、いかに臨機応変に対処できるか、そして、自分の頭で必死に考えることだ。

なるほどと思った。

「目の前の課題をこなしていると道は拓ける」ということも「ひたすら努力していれば、結果はあとからついてくる」ということも、実はない。
どこに行くかもわからず、ただ闇雲に走っていたら突然ゴールに到着したということも、万に一つの確立にもない。

トライアウトに集まった彼らに足りないものはなにか?
いま、その場で求めらているものは何か?
それを実現するための具体的なプランは何か?
そして、自分をどうアピールするのか?

つまり、自分の頭で必死に考えるという「戦略ある野心」が求められているのだ。

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