第125号『Y氏の教え』

「その気」とは、「具体性を持った妄想」のことである。
私たちには、もともと強く念じたことを実現させるように潜在能力が備わっている。
だから自分を上手に「その気」にさせることが出来れば、かなりの確率で欲しいものを手に入れることが出来るよ。

居酒屋で一杯やりながら、この仕組みを教えてくれたのは、当時、広告や演劇、CM制作からシステム手帳、靴、傘など様々なグッズまで製造していた会社の社長、Y氏である。

そして、欲しいものを手に入れるためのより具体的な方法を伝授してくれた。

「紙を持っているか?」とY氏。
この日、あいにく手帳も持っていなかった。
Y氏は、やおら居酒屋のテーブルにあった紙ナプキンを一枚取り出し、書きはじめた。

まずは正方形を描き、縦に2本、横に2本、等間隔の直線を引いた。
ナプキンに9個のマス目が描かれた。

そして、また問われた。
「いま、カワムラ君が欲しいものは何かね?」と。

一度失ったバイクの免許を再度取得したいと思っていた。
少し間があいたが、「バイク」と答えた。

躊躇なくY氏はその真ん中のマス目にバイクと書いた。

「バイクは何時までに手に入れたいのか?」
「え?」
予想もしていない質問にしばらく沈黙が続いた。

なんとなく「6ヶ月後の●月●日」と答えた。

さらに、質問は続く。
欲しいものを書き込んだ真ん中のマス目の回りの8つのマス目に、欲しいものを手に入れるために何を何時までに完了するか(例えば免許を●月●日までにとる、例えば欲しいバイクのカタログを●月●日までに集める等々)を問われ、答え、8個のマス目が全て埋まった。

書き終わってY氏が言った。
「この8つのことを完了した時、君は必ずバイクを手に入れることができるよ。」

半信半疑。
ともあれ、こうして僕は一枚の紙ナプキンに書かれた、「欲しいものを手に入れる設計図」を受け取った。

細部にいたるまで想像できるような未来は、そうでない未来より明らかに実現性が高い。

だから例えば、バイクのコーナリングの上手い下手はコーナーをきれいに抜けていくイメージが持てるかどうかによる。

つまり、コーナーをきれいに抜けたときの体感をありありと予感できるときにはきれいに抜けられる。
しかし、逆にリアタイヤがずるずるすべったらと想像するとまさしくその予想のごとくなのである。

私たちは、輪郭の鮮明な「未来像」を下絵にして、時間をトレースしてゆく。

目的地にたどりつくまでの道順を繰り返し想像し、その道を歩く自分の姿を想像するひとは、そうではないひとに比べ、かなりの確率でその目的地にたどりつくことができる。
「夢を実現する」とはそうゆうことである。

かくして6ヵ月後、僕はカワサキGPZ 400を手に入れることが出来た。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です