先日、スポーツイベントの打ち合わせのため九州、大分に出かけた。
株式会社大分フットボールクラブの取締役でチーム管理部長でもある藤原司氏にお会いした。
現在サッカーJリーグ1部「大分トリニータ」の管理運営の中心的人物でもある。
穏やかな話し振りと、冷静で緻密な会話の組み立てに好感を覚えた。
ホームスタジアムは大分空港から高速道で60分、高台に聳え立つドーム型スタジアム「ビッグアイ」である。
最大収容人数4万3千人、その巨大な客席を眺めながら藤原氏の口から出た言葉に、耳を疑った。
大分トリニータの前身チーム大分トリニティ(1994年創設)が県リーグに参戦した初戦、観客数はわずか3名。
そして、Jリーグに加盟した1999年でもまだ入場者平均が3,000名程度だったというのである。
ほとんど空席の観客席を想像してみた。
なにしろ、大分には高校ラグビーの古豪、大分舞鶴高校があり、サッカー不毛の地といわれたところである。
当然覚悟していた試練だったが、あらためて前途の厳しさを思い知らされたという。
スポーツにおける経営的発想が注目されて久しい。
企業の資本によるオリンピック開催として大きな黒字を生んだ84年のロスアンゼルス五輪、93年に始まったJ リーグの成功などを契機に、スポーツがビジネスとして認知されるようになった。
一方で、かつて名門といわれた実業団チームの休廃部など財政面を企業に頼る構図の衰退、少子化による競技人口の減少など、スポーツを取り巻く環境が一段と厳しくなっている。
こうしたなか、自力で経営努力をしなければ存続すら危うい時代に入っている。
藤原氏の口から出る言葉は時に驚くほど激しい。
「観客席をサポーターで埋め尽くすためには、前例があろうがなかろうが集客に効果があると思うものはすべてやった」と。
かつてサッカー不毛の地はいまや4万人を越えるサポーターが集まり、チームカラーのトリニータブルーでスタンドが埋め尽くされている。
3人から40,000人に至るまでにどんなドラマがあったのだろうか。
おそらく、世の中に存在する成功の大半は不成功の限りない集積の果てに具現化したものである。
だから、やれることは全てやってみる。
IMPOSSIBILE IS NOTHING.
「不可能」とは「可能」への通過点にすぎない。