ショッキングでシリアスな言葉だ。 でもある意味当たっているかもな、と思う。
私の両親は戦中派で日本が神の国である、という教育を受けて育ち、そして裏切られた。
そんな二人が生涯を通じて取り組んできた「平和」を守る為に生きる、というスタイル。
若いときはそのあまりのピュアな想いに対して「人の為とか地球の為とか人類の為とか、
理想論ばかりで一銭の得にもならないじゃないか。そんなことしたって世の中は変わらないし
馬鹿にされたりあきれられたり。どうしてそこまでやるんだ。」と思っていた。
そしてそのひたむきな思いに対して逆行するかのように、拝金主義、汚職、教育の荒廃、
親殺し子殺し、政治離れ、下流志向、格差社会とネガティブな要素が世の中にあふれ、
それをまるで「ガタガタいわねえでいうことを聞きゃいいんだ。ここまできたらそうするしか
ねえんだよ。昔のように国を信じればいいんだよ」ともいいたげな「美しい国」というファッショな
匂いを感じるスローガン。
そんな中で絶望せず、希望をもって人類の良心を信じたい、というような思いが彼らの
ライフワークだったと思っている。もちろんそれに一緒に共感してくれる人に囲まれ、
今でもそれは続いているのだが。
そして終戦62年目を迎えた今年、ある電話が両親の元に入った。NHK広島支局の
若いディレクターからだった。「柳澤さんが取り組まれた星野村の火、そして山本さん
についてインタビューをさせてください」
福岡県星野村。そこに住む故山本達雄氏(平成16年死去)は、昭和20年9月、原爆投下後の
広島の地下壕でくすぶっていた火を懐炉に持ち帰った。いつかアメリカを焼き尽くすための
「恨みの火」だったという。
それが終戦を迎え日本が復興をたどる中、いつしかそれは二度と戦禍をくりかえさない
「平和の火」として変化し、昭和43年から星野村の管理のもと、現在もともされ続けている。
その火は全国の12箇所に分火されたが、原爆投下地の広島では62年目の今日に至るまで
被爆者の心情を考慮し火はともされなかったのだ。
それが今回いろいろな方の協力でついに今年、広島に13番目の火として灯されることが
決まり、その協力をしたNHKは、遺族の方と共にその活動をしていた父に取材の申し込み
をしたとのことだった。
彼の取材テープは8月6日、広島の平和記念式典の中にも流れたのだが、その反響が多く
今回全国放送で放映されることになった。
ふるさと発「“原爆の火”守り続けた男」
9月1日(土) 午前10:32~午前11:00(28分) NHK総合
あえてこのブログでそんなことをいうことがモラル的にどうなのかは分からない。
ただ「俺の遺言だと思ってくれ」
そう彼はいっていた。
老境である彼らにとって冗談で言える言葉ではないと思う。だからこそその思いに敬意を
表し、ここに記させてもらった。
政治的思想も何も関係なく「戦争はいやだ」という思いは全世界共通だと思っている。
そのためにつまらんことを気にしている年でもないと思う。いやなものはいやなのだ。
そしてそれはおそらく真理だと思う。しかし誰もが思うその真理にこだわリ続けて生きている
人はどれほどいるのだろう。
そんな中、生涯をかけてその「一銭の足しにもならんこと」を続けてきた男の言葉を私も
聞いてみようと思う。