
5月28日、横浜地裁101号法廷にて、福島原発事故で神奈川に避難し、東電と国を相手に訴訟を起こした「福島原発かながわ訴訟」の第3回口頭弁論が行われました。
地裁は100名近い傍聴希望者により行列、抽選になりましたが、私は外れてしまったので、1時間の意見陳述を外で待とうとしていた矢先、ばったりFB仲間のSさんと出会いました。事情を話したら「私よりも柳澤さんが見たほうが・・」と券を譲ってくれ入廷することができました。
フェイスブックで多くの仲間に発信するためにSさんが譲ってくれたのです。
今日の口頭弁論は、原告側の声を代表し3人の弁護士さんが話します。
先方には東電代理人の弁護士2名。絵に描いたような秀才で無機質な感じ。
また、国の代理である女性をはじめとする弁護士3名。こちらも見るからにエリート、表情が暗い。
最初に弁護団事務局長であるK弁護士が先日の大飯原発の再稼動見送りの判決文を解説しながら「あくまでも人格権こそが尊重されるべきである」と強く述べました。そして「責任と賠償は表裏一体であり、賠償だけで終わるものではない。この事故が起こった原因の追究と、責任の所在をはっきりさせた上でこその賠償だ」と主張。
次の弁護士さんが福島原発事故の問題について発表。
広島と長崎の例を出して、ABCCによる調査が1950年から行われたというデータを提示。
要するに、その5年間のうちに体力の弱い女性や子供は既に亡くなっていること、また、被爆者の認定に関してもあいまいな基準であったことにより、今後の福島について同じように考えることができないと。
さらに、福島での震災関連死認定(1,671名)が、他県に比べてこの3年間増加していること、地震で亡くなった1,603名よりも多いデータを読み上げ、原発事故というもののもつ問題について触れながら陳述をしました。
最後にもう一人が、事故の状況として、非常用の冷却装置のほとんどが地下にあり水没していたため、全く機能しなかったという状況説明をしました。
最後に第3次原告側の代表として、双葉町在住で幼稚園の園長だったという60代の男性による意見陳述。
それまで書類を見ていた3人の裁判官、神妙な面持ちで聞き入ります。
不思議だったのは、地震後の辛い話ではなく、爆発前にあった美しい福島の景色の話のほうが、胸を熱くさせることです。
原告席に座った何人もの女性がハンカチを当てて涙を拭いているのが見えます。
その中の一部分を抜粋してご紹介します。
「家には、庭を作りました。形の整った大きな庭石や木々を配し、玉砂利を敷き詰めました。春にはつつじが鮮やかな紅色の花をつけ、庭を華やかにしました。妻は草一本ないよう、熱心に手入れをしていました。
父は野菜作りが大好きで、よく取れたものを近所の人にあげていました。家の周りには、柿、梅、いちじく、ゆず、すだち、キウイなどの果樹を植え、みょうが、タラの芽、うど、わらび、ぜんまいなどの山菜類も作っていました。
妻は、これらの豊富な食材を使っていろいろな料理を作り、人を招くのが大好きでした。広い台所を、妻の友人たちは『憩いの場』と呼んでいました・・」
魂の底から発せられる、しかし静かで悲しい現実の陳述に、心なしか裁判長が心を動かされ、目が潤んでいた、私にはそう見えました。
こうした約1時間の弁論終了後、近くの会議室で報告集会。ここにも入りきらないほどの人が来ます。

かながわの原告団はこれで3次、合計93名が提訴した状況。
これからはこの3陣が一度に原発事故賠償について合同で審理に入り、次回は、これまでの意見陳述の内容に対する東電及び国側の言い分を聞くフェーズに入るそうです。
弁護士さんいわく「東電と国がこれで土俵に上ってきます。これからがようやく本番です」とのこと。
引き締まる会場の空気。
その後、先ほど意見陳述した原告団代表の男性が一言どうぞと言われ前に立ったところ、彼は突然「ふるさと」の1フレーズを歌いだしました。
静かに聴く原告団。ふたたびハンカチを目に当てる女性。
歌い終わって彼はこう語りました。
「過疎だ、不便だと言いながらも、失ってみてこれだけふるさとがなくなるということのつらさが重いとは想像していなかった。その思いは日々忘れるということではなく、日々重く、大きくなっている」と。
次回は7月16日に開廷です。本当のたたかいはこれから。
この訴訟を一部の人だけのものにせず、注視して、そして知らせていきたいと思います。
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