
私らの住まいのとなりに住む、高校時代からの親友夫婦が可愛がっていた「ツレ」という猫がいました。
ツレは、まさに「猫らしい猫」。
自由気ままで気品高い超美人さんで、近所にいる野良猫の友達はいず、人が大好きなカワイイ子でした。
なぜか私らの家も気に入ってくれたようで、朝「ニャー」と玄関で鳴き、入れてやると押し入れでゆっくり昼寝をしていったり、夜に来たときは友人宅では絶対にしなかったそうですが、ベッドに入ってきて私と妻の間に入ってきて一緒に寝たりしてくれました。
向かいに住む生活保護のおじさんの長屋にも頻繁に出入りする、いわば私らの「アイドル」。
大みそかにも友人宅に集まった輪のなかに加わり、共に正月を迎えた彼女の容態が急変したのは、正月3が日を過ぎたあたり。
外傷からくるウィルス性の急性腎不全を発症、その日から一転して闘病生活が始まりました。
友人の奥さんのT子さん、通称ツレママは、食欲のないツレにスポイトで給餌し噛まれたりしながらも、看病に明け暮れていました。
私ら夫婦も毎日毎日友人宅にツレの様子を見にいきました。
むかいのおじさんも定期的に友人宅に来て、いろいろとツレが好きなものを置いていってくれたりしました。
ツレは普段から名の通りツレない、俗にいう「ツンデレ」な子でしたが、私らが行くと、寝込んでいたのに体を起こしてほんのちょっとのご飯を手から食べてくれたり、水を飲んでくれたり、一生懸命何かをしようとしてくれました。
元気な時も病気になっても、こうして私らを繋いでいたツレは、残念ながら2月2日の夕方に息を引き取り、天に召されていきました。
その2時間前くらいに私と妻で様子を見に行ったとき、寝返りを打てなかったツレは、それでも必死に体を動かし、しっかりと私らの目を見て、そして毛布に隠れました。
思えば最後の力を振り絞って、私らにお別れの挨拶をしてくれたのだ、そう思っています。
大事な家族で友達であったツレをいきなり失ってしまった私らの心にぽっかりと穴が開いてしまいました。
あまりに急な展開で、まだ受け止められないところもありますが、それでもツレが私らを強く繋いでいてくれたことだけはハッキリと胸に刻まれています。
ただ、私はお別れした命には、いつの日か自分が行く先では必ず会えると信じています。
なので、ツレとも「しばしのお別れ」なのです。
彼女が繋いでくれた大事な絆を大事に、また再会できる日を楽しみにしています。
ツレちゃん、ありがとう。
いつの日か、また一緒に遊ぼうね。
