昨日11月3日は「文化の日」でしたね。
だからというわけでもないのですが、ようやく身辺が挙式以降落ち着いてきたこともあり、本を読むか・・と何気なしに家の本棚を眺めていたところ「!」と無意識に手に取った本がありました。
それは「鉄腕アトム」や「ブラックジャック」「火の鳥」などの大作を生んだ、日本を代表する漫画家手塚治虫氏の「ガラスの地球を救え」(光文社千恵の森文庫)でした。
この本は氏が生前より出版を前提に進めていたものでしたが、平成元年(1989年)61の若さで急逝してしまったことにより中断していたものを、手塚プロダクションの方や出版社の方が編集の末1996年に出版されたものだそうです。
1945年の終戦直後にデビューし、丸々43年間もの間、それこそ亡くなる10日前まで製作中のアニメの仕事を鬼気迫る感の中でされていた氏が、マンガを通じて伝えたかったことをまとめて綴ったこの本を手に取った私は、なんとその日11月3日が偶然にも氏の誕生日だったと聞き、本当に驚きました。
もう数年前に買って読んだものでしたが、冒頭を読んだだけでも改めて新鮮に映ります。
というより、以前読んだときよりそのメッセージの重さや意味がとても重いものだと感じます。
理由は、氏の言葉の一つ一つが、3月11日以降続いているこの社会で起っていることへの警鐘であり、かつ予言であり、そして真理にちかいものだという実感があるからなのです。
氏は本の中で「アトムの悲しみ」という一節のなかで、「ロボットであるがゆえに人間との生活の中で疎外感を感じるアトムを描いたのに、それが表現されずに科学の力ばかりが強調されてしまったことに対し大変残念だ」そう語っています。
科学至上主義に対するアンチテーゼを見落としてきた、いや見ようとしなかった社会が、氏の没後10年を経て直面しているこの事態を、私達が今一度見直さねばならない時期にきているのではないか、そう感じます。
そんな思いを感じつつ、とはいえ変わらないのではないか、というなかば重い気分でいたら、国立市が市役所公舎や市内小中学校などの20か所を、東京電力から民間の電力供給会社に切り替えたというニュースが目に入りました。ニュースはこちら
直接このニュースが、手塚氏のメッセージと繋がるというわけではないと思われるでしょうが、私の中では、社会のなかで多くの人が望みながらも進まなかった第一歩を、行政が踏み出したというニュースとしっくりと繋がりましたし、とても元気をもらった気がしました。
それが奇しくも氏の誕生日である11月3日ということ、そしてまたその日に氏の本を偶然手にとった私にとって不思議な符合の一致を感じたのです。
3月11日以前から、今年から来年にかけて大きなパラダイムシフトが起きるということをここでも書いてきましたが、激動の2011年もあと2ヶ月弱。
来る2012年にむけて、気持ちを少しずつ、でもしっかりと準備していこうと感じた出来事でした。