第183回 「良心の時代」

埠頭から
埠頭から

私がブログを書かせて頂いている次代の会で、昨年12月に行われた講演会の講師として神奈川フィルハーモニー管弦楽団 専務理事である大石修治氏にご登壇頂きました。

先生は国内最大の楽器メーカー、ヤマハで実に35年に在籍し、音楽文化の普及の為に企画した「男たちのピアノパーティー」など各種のイベントで大成功を収められ、定年退職された後に、2006年同楽団の専務理事に就任。同イベントでは12年の長きに渡り6,700名の観客を動員、当初300人しかいなかったピアノ教室の生徒が最終的には20,000人にまでなったそうです。

現在はみなとみらいホールでの学校や老人ホームなどへの訪問演奏会などを年間150回も実施されながら、横浜国大や洗足音楽大学でも「アートマネジメント」や「音楽プロデュース」の講師なども務められています。
「クラシックというと敷居が高くて・・」という印象を持っていたのですが、気持ちを落ち着けるのにはクラシックがいいなあ、とこの年にして恥ずかしながらようやく分かり始めてきた私にとって、氏の情熱あふれる話は今までの印象を払しょくするに十分なインパクトがありました。

氏が提唱するのは日本の「文化政策」への転換。
楽団の運営に関しては、行政の支援がないオーケストラの場合は企業などの支援がないとなかなかやっていけないという現実があるのだそうです。しかも効果が見えないという理由で行政の予算は仕分けでさらに削減されつつあるそうです。

しかし、初めて学校や老人ホームに来た本格的なオーケストラの音に感動した子供たちや老人、先生、そして父兄の心に「感動の種まき」を支援することで人が育ち、結果として社会が変わっていく。
その為の支援を国が宣言して政策として打ち出し、向かっていくべきだというものです。

私は知らなかったのですが、イギリスは1998年「クリエイティブ産業への道」という指針を発表、国家戦略を変換した結果、金融サービスを抜いてイギリス第一の産業へ成長したそうです。
また昨今飛ぶ鳥を落とす勢いの中国も、上海、香港、北京がクリエイティブ産業への道を目指しているそうです。

子供の音楽祭を開催する為にイスラエルに行き、氏と会った4日後に、パレスチナとの和平交渉を進めていく最中、自らと同じユダヤ人の青年に暗殺されてしまったイスラエルのラビン首相の手はその鋭い目とは対照的に非常に暖かい手だったそうです。
氏が単なる理想ではなく「政策」というレベルで文化を育てていこうという情熱は、こういった経験からくるものなのだと理解しました。

氏は自らの構想を「理想ばかりかもしれない」と仰っていましたが、これだけ社会が、それより何より地球全体が変化してきている現代においては、今までは現実化できなかった人間にとってよいであろうと思われる(これはあくまでも主観ですが)発想やプランが具現化されるチャンスが出てくる「良心の時代」になっていくに違いないということを私は希望しています。

もっと私も氏のような人達との繋がりをもって、少しでもそのお手伝いをしていきたいと思った出会いでした。

神奈川フィルハーモニー管弦楽団 http://www.kanaphil.com/

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