ファンランドへようこそ。ファンサイト有限会社、取締役の川村勇気です。
去る1月22日に、今年で74回目となる「日本スポーツ賞」がオークラ東京で開催され、私が事務局をあずかる日本近代五種協会からはパリ五輪で銀メダルを獲得した佐藤大宗が「競技団体別最優秀賞」で二年連続の受賞となりました。
私は付き添いとして初の参加だったのですが、想像以上の豪華な催しに少し驚きました。各競技のスーパースターたちがこれだけ一堂に集まる機会もそうそうないのではないでしょうか。
(アーカイブ)https://www.youtube.com/live/wr69Kf5a0bQ
それ以上に、2020オリパラ組織委時代の仲間や、そのときお世話になった関係者に予期もせず大勢お会いすることができ、思いがけず貴重な時間を過ごすことができました。
2020東京オリンピック・パラリンピック競技大会は、当初7,340億円というミニマム予算で「世界一コンパクトな大会」をうたって招致に成功したものの、結果的に組織委員会の最終報告では当初計画の約1兆4,238億円。また会計検査院の指摘で、国が支出した関連経費を含めると、実質的な総経費は約1兆7,000億円近く。さらに関連事業を含めると3兆円規模とも指摘されるなど、冗談のような結果に終わりました。
このイベントを「負の遺産」として決定づけたのは、当初は「個人の収賄」から始まり、やがて広告業界全体を巻き込む「組織的な談合」へと発展した、日本スポーツ界の構造的な老朽化が引き起こした一連のストーリーでした。
特に談合疑惑に関しては、組織委員会大会運営局の元次長と最大手広告代理店側が主導し、エージェンシー各社やイベント会社に対し、「どの会場をどの社に担当させるか」をまとめた一覧表を作成していたとして、東京地検特捜部はこの組織委元次長、広告代理店元幹部、民放キー局制作会社の幹部などを独占禁止法違反の疑いで逮捕。その他のエージェンシーの幹部も在宅起訴され、広告業界のトップ企業が軒並み刑事責任を問われる前代未聞の事態となりました。
余談ですがこのニュース発報の直後、各種サブスクから消えた河瀨直美監督の記録映画「東京2020オリンピック SIDE:A」「SIDE:B」は、今となってはまた視聴が可能にはなっていますが、やはり上述の結末を描き切れていないという点で、奇しくも不完全な作品になってしまった感はぬぐえません。
この在宅起訴された幹部のいる広告代理店のひとつに、私は2017年からスポーツ要員として在席しており、談合でアサインされたとされる競技会場の受注に向けた仕事をしていました。
さらに2018年からは組織委の職員として出向し、逮捕された元次長の部下としてマラソンの制作を担当しており、まさに当該事件の渦中にいたわけです。
もちろん当時は末席でしたのでそうした情報などはつゆも知らず、結果として私なんかの責任が問われることはなかったのですが、上司にともなわれた某広告代理店のオフィスで、各事業者に会場が割り振られた一覧を見せてもらったことはありました。当時は「へー、こういうのってもう決まってるんですね~」というマヌケな感想しかなかったのですが、退職後に先輩から聞いた話では、メールボックスなど私の通信履歴もかなりさらわれたということで、タイミングが違えば危なかったのは間違いありません。
とりわけ、元次長の逮捕に関してネット上の情報では、
個人的な金銭授受ではなく、「大会を成功させなければならない」というプレッシャーから法を犯した
という総評をされており、そうした観点から東京地裁も執行猶予付きの判決としましたが、この感傷的な評価は現場にいた身としてはやや違和感がありました。
彼の判断基準は徹底的な我田引水にあり、五輪という国家事業を契機に、以後の自身の国内スポーツ界でのプレゼンスを確固たるものにする、という「俺のレガシー」がすべてでした。
組織委員会内の各ポジションを自分の息のかかったスタッフや会社からの出向者で固めた結果、中にはポジションのミスマッチや能力不足によるエラーが生じ、数多くの業務上の支障をきたすようになっていました。
実は私も彼の「息のかかった企業からの出向者」だったのですが、当時の私は長いものに巻かれるよりも業務遂行を優先したため、いたるところで彼と衝突することになり、結果として1年あまりで出向解除に。また、そのしばらく後ですが、この経緯の影響もあり、最終的には出向元の会社も去ることになりました。
その後、仲間の助力で制作事業者としてオリパラのマラソン現場には立つことができましたし、コロナによるオリパラの延期から免れてeスポーツのポートフォリオを自身のキャリアに追加できたことなど、個人的には結果オーライだったわけですが、やはり起訴・逮捕のニュースを目にした日は、思うところあって赤飯を炊きました。
あと数日でトリノ五輪を控え、スポーツ界隈も徐々に盛り上がりを見せるようになってきましたが、スポーツ業界であの事件があまり語られることはほとんどありません。
一部入札制限など残っているようですが、最大手の広告代理店はまた当たり前のようにスポーツビジネスをおこなっており、最近ではかの元次長も競技団体周辺の周辺を出入りし始めているという話も耳にしました。
この後、日本のスポーツ業界がまた大きな転換点を迎えるのかどうかは分かりませんが、その時に私たちが今度こそ本当のレガシーを残すのか、それともまた「俺のレガシー」を取りに行ってしまうのか、その差はもしかしたら今から始まってるんじゃないかなと、メダリストが集まる華やかなステージを見ながら考えていました。
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