久々に「企業ファンサイト」について話してみたい。4月弊社は25周年を迎える。キリンシーグラム社のウイスキー、ボストンクラブのファンサイトを皮切りに、これまで数々の企業ファンサイトの構築・運営に関わってきた。そもそも、企業が提供しているサービスや商品、さらには企業それ自体のファンは存在する。それも、かなりの熱量を持ったファンが存在する。しかし、多くの企業は新規顧客の獲得には熱心だが、既存客や贔屓客(ファン)に対しては極めて冷めた対応が一般的だ。そして、いまも新規顧客獲得に多くの時間と資金を投入しマーケティング・プランの構築を試みている。
マーケティング・プランのセオリー、まずは4つのP、プロダクト(製品)、プライス(価格)、プレイス(場所)、プロモーション(宣伝)を核にする。この4つのPを確度を上げるためにR、つまりリサーチを行う。このリサーチによって、顧客のニーズや認知方法、嗜好と志向さらには思考までも理解することでS、すなわちセグメント(分類)しなければならないことも分かっている。また、企業がすべての顧客に対応することなどもはや不可能であり、各社それぞれに得意とする顧客層を的確に選ばなければならない。これがT、すなわちターゲティングである。しかし、こうした一連のマーケティングプラン構築に取り掛かる前に、何より重要なステップがある。それがもう一つのP、ポジショニングである。
例えば、「商品特性」によるポジショニング。スバルは、顧客の頭の中に「安全性」というポジショニングを築くことに成功した。例えば、「価格」によるポジショニングもある。ハーゲンダッツは、高価格帯のアイスクリームを売り続けることで、顧客の頭の中に「高級アイスクリーム」というポジショニングを確立した。例えば「販路」によるポジショニングもある。ファミリーマートでの衣料ブランド、「コンビニエンスウェア」の展開がヒットしている。
こうした事例から見て取れることだが、ポジショニングという考え方と手法(コンセプト)が、市場における企業やブランドの地位と独自性を確立し維持するための、強力なツールとして威力を発揮していることがわかる。
では、このポジショニングを実践するためには、何から着手すればよいのか?僕たちはつい、問題や課題を見つめ直すことなく解決の方法ばかり求めがちだが、結論を急ぐのではなく、いま置かれている状況を順序立てて捉え直すことが重要である。そもそも、ポジショニングとは、逆転の発想である。企業の側からではなく、顧客の側からの視点である。自社がどんな企業かではなく、顧客の頭の中で自社がどんなポジションを築いているかを問うことが最も重要なスタートである。
顧客が何を欲しているのかを解っていない企業は、顧客の欲しいものを提供することは絶対できない。これは、原理原則である。余談だが、原理とは、天地万物の理(ことわり)であり、仕組みのことである。そして、原則とは、人がその原理に筋道をつけ、運用できるようにした決まりのことだ。
弊社が提案する「企業ファンサイト」とは、従来のマーケティング・プランの構築を否定するものではない。むしろ、新規顧客獲得後の既存客や贔屓客(ファン)を自社のチームメンバーの一員として迎え入れ、彼らが何を求め、どんな商品やサービスを開発すればよいのか、どこを改善すればよいのか、その具体的な考え方や、方法を共に見つけ出すことのできるポジショニングを軸としたマーケティング的発想をもったサイトのことである。
結果として、企業が「ファンサイト」を持つことは、会社案内や商品サービス情報の提供といった従来の企業サイトの運営では出会うことのない価値や意見を持つ、ファンを発見し、その意見やアイデアといった一次情報を収集する「装置」でもある。
今後、ますます顧客と一対一で向き合うことが求められる時代だからこそ、企業のとってファンサイトは欠かせないものになると確信している。