第357号『道徳という名の知恵』
時計職人だった父の日課は、朝の掃除から始まる。 朝7時、住み込みの弟子たちと、はたき掛け、掃き掃除、雑巾掛け、乾拭きと、ほぼ、一時間ほどかけて徹底的に店の隅々まで掃除をする。 なぜ、これほど丁寧にするのか、と問うたことが
第356号『星占い』
「旧友が訪ねてくる。」 銀行での待ち時間、雑誌をパラパラとめくっていた。 その雑誌の星座占い欄にそう記されていた。 しかし、誰か来るでもなし、何事か起こる気配もなく日々過ぎていき、星座占いの記憶も薄れていた。 積んでいた
第355号『旅へ』
ここ2週間ほど、ツアーサービスを展開するJ社のファンサイト制作ため取材を続けている。 対象は50歳以上の十数名。 ツアーを体験した方々にインタビューした。 口々に「楽しかった」「美しかった」「美味しかった」「感動した」と
第354号『谷中散歩』
秋晴れの昼下がり、妻と古くからの町並みが残る下町、台東区の谷中に出かけた。 いままで、行きたいと思いながら行けずにいた街だ。 この日、友人のYさんとそのお友だちの計5名での散策である。 午後二時、地下鉄三田線白山駅の傍に
第353号『師匠を持つということ』
根岸吉太郎監督作品、映画「ヴィヨンの妻」を観た。 脚本、役者、撮影、照明、録音、美術、衣装、編集・・・ その全てにおいて、目配りが行き届いている。 これは、偶然ではない。 30年以上前のことである。 日本映画はTVとハリ
第352号『朗読会』
7月の最後の日、朗読会に参加した。 友人で、現在、オライリージャパンの編集長でもある伊藤篤さんから誘われた。 彼とは10数年来の付き合いで、且つファンサイト理論をともに作った盟友でもある。 「朗読会に参加して」との誘いに
第351号『上質さということ』
昨春から、ほぼ毎月一回のペースで「スタイリッシュ・ ダイニング」という料理教室付きパーティを浜町にある、ファンサイトのアトリエで開いている。 ある日、古くからの友人で料理研究家の“らーぷ”料理研究家の“らーぷこと、鈴木直
第350号『楽しく走るコツ』
シルバーウィーク最終日、千葉南房総市千倉のロードレースに出た。 海から吹く風は爽やかだが、日差しは夏のように強烈だった。 走りはじめて数分、汗が吹き出す。 暑さのせいか、随分スタミナを消耗していると感じた。 それにしても
第349号『不快というプレゼンテーション』
ある日、いつものようにスーパーで買い物をしてレジに並んだ。 前にいた女性が、レジ脇に下がっている札を自分のカゴに無造作に入れた。 なんだろうと、それを見た。 この札を入れると、ポリ袋が要らないということがわかるサービスだ
第348号『ココの野心』
映画「ココ・シャネル」を観た。 紛れもなく、ファッションブランドのひとつであるココ・シャネル。 しかし、ココの出現は単にブランドを生み出した女性ということに留まらないのではないかと思った。 窮屈なコルセットを嵌め、体形を