第33号『自明』

自明なものは、その欠落や喪失によって姿をあらわす。 10年ほど前、日本盲人マラソン協会のメンバーになった。 とりわけボランティアに興味があったわけではないがトレーニングの一環で、かつ自分の好きなものならお手伝いも悪くない

第32号『公共としての身体』

その黒々とした集団を目撃したのは取材で空路を利用するために訪れた羽田空港のロビーであった。 早朝、出発カウンターに向かう途中のことである。 全員が床に体育すわり(尻を床におろし両膝をくの字に折りその膝を両手で抱えこませる

第31号『翻案文化その1』

同郷の後輩、奈良美智氏の「I DON’T MIND, IF YOU FORGET ME.」展を観た。 会場となった弘前市の吉井酒造煉瓦倉庫はかつてニッカの林檎酒「シードル」の工場であった。現在は貸しスペースと

第30号『じっと向き合う』

ある日3人の男たちが椰子の木陰で海を見ながら与太話をしていた。 ハワイで行われるロングディスタンスの競技でどれがもっとも過酷かと。 あるものは4キロにおよぶ遠泳と答えた。 いやいや、およそ180キロのバイクレースだともう

第29号『清潔という名の病』

「唾をつける。」とはもちろん字義どおりの意味でもあるが、転じて、自分のもにする。 あるいは他人に渡さないために前もって関わりをつけておくという意味でもある。 そういえば子供のころ怪我をすると母はその傷口に自分の唾を付けて

第28号『再生』

大量生産による大量消費という近代的生産様式は、自然からの収奪を無限にできるという倒錯に基づいている。 このまま発展し続けるならば、どこかで破綻をきたすことになることは誰の目にもあきらかである。 世界人口の20%に満たない

第27号『誇り』

同僚だった和田洋氏(行定勲監督「GO」、村上龍監督「限りなく透明に近いブルー」の美術監督)の同級生で作家の村上龍の小説「69」はぼくらのあの時代の空気と気分をほぼ掬ってくれている作品である。 そのイントロを少し、 「一九

第26号『怪獣』

分けることは解かることでもある。 時計修理工の父から教えられたことの1つである。 分解する→錆や汚れを払う→原因を調べる→部品を交換する→再度組み立てる。 その時、時計という小宇宙のなかで父は司祭者となる。 中世ヨーロッ

第25号『想像力』

多民族国家として、多様な人種と言語が混在するアメリカではその国家観形成の手段として戦争と映画という2大プロパガンダが効率よく機能している。 地域よっては英語を共通言語として使用していないエリアが数多くあり、英語をほとんど

第24号『陰翳礼讃』

「欧州の都市に比べると東京や大阪の夜は格段に明るい。 巴里などではシャンゼリゼの真ん中でもランプを燈す家があるのに、日本ではよほど辺鄙な山奥へでも行かなければそんな家は一軒もない。 恐らく世界中で電燈を贅沢に使っている国