第43号『また描こうと思う』
生まれた時から目の不自由な人が、ある日突然視力を回復したという体験記を読んだことがある。 最初に彼が見たものは机やら顔やらといった像ではない。 そこにあるのは恐ろしく凶暴な光の渦巻きである。 彼がそれまで机だと認識してい
第42号『苦楽』
目的は方法を規定する。 目的にもっともはやく到達するための方法を見てみたいと思うならスポーツの世界を覗くのが一番だ。 趣味で続けているトライアスロンは水泳・自転車・ランの3つの競技を組み合わせたスポーツである。 その2番
第41号『花に嵐』
大阪に本社のある葬儀会社の広報誌の仕事をしていたことがある。 その何回目かのゲストとして藤本義一氏にお願いした。 「あなたにとって理想のお葬式とは」、といった内容だったように記憶している。 いま考えるとなんと凡庸な企画で
第40号『創造的破壊』
逝き方は生き方を決める。 人のいきかたはそのひとの意志による。 70歳で自分の生をまっとうすると宣言した恩師、幹英生は2000年11月19日自らの画業50年の出版記念パーティのその日、5月からの闘病生活の末、宣言どおり他
第39号『光を観に』
10月26日、アナハイム・エンジェルスとサンフランシスコ・ジャイアンツのワールドシリーズ第6戦を観た。 5回にバリー・ボンズのホームランがあり5対0と一方的なゲーム展開にジャイアンツの勝利がほぼ決まったかと思われた。 し
第38号『記憶−終わりなき構築』
イギリスの新鋭、クリストファー・ノーラン監督の映画「メメント」を観た。 (「トレイン・スポティング」のダニー・ボイル、「スナッチ」のガイ・リッチーなどイギリスの若手監督たちはなかなかいい。) 妻を目の前でレイプされ殺され
第37号『パッっと』
「第1回タイ・トライアスロンカップ参加者募集!」 マガジンハウス社の雑誌「ターザン」に掲載された小さな募集記事を見て、心が疼いた。 やってみたい。 タバコ一日40本、飲食好きなだけ、夜更かしあたりまえ。 そんな生活に少し
第36号『自然体ということ』
東京都美術館で開催された「狩野探幽展」を観た。 探幽は徳川幕府のお抱え絵師であり、画壇の権力の頂点に立っていた人でもある。 したがって、たしかに華美で力感のこもる一種の息苦しさを感じる作品群も数多くあったが、一方で西洋絵
第35号『詐欺』
ディズニーアニメ「ファンタジア」のなかで魔法使いの弟子になったミッキーが、先生の留守の間に水汲みを命じらる。 師匠が留守のあいだに、覚えたばかりの呪文の効き目を試してみるいいチャンスとばかりに弟子は聞きかじりの呪文で箒に
第34号『貧しさということ』
別に、特別悲しいシーンでもないのに涙がでた。 山田洋次監督「たそがれ清兵衛」(原作は藤沢周平)は静かだけど忘れていた何かを思い起こさせてくれる映画でもある。 質素な食事、飯とわずかなおかず。食い終わって白湯をその飯椀に注