第1106号『母の茶碗蒸し』

蒸し器から湯気が出ている。キッチンに立つ妻が、コンロの火加減を気にしている。その仕草を見て、ふと母のことを思い出した。 母は、あまり料理が得意ではなかった。家業の時計店を、父と切り盛りしていた。専業主婦のように、料理に手

第1105号『貯筋に励む』

先週、来年2026年のワールドトライアスロンシリーズ横浜大会にエントリーした。ネットからの受付のみであり、毎回、申し込みには悪戦苦闘する。ともあれ、これで来春までトレーニングをしなければならない理由が出来た。来年5月、前

第1104号『朝、思い出したこと』

朝の番組だった。詩人の高橋順子さんが出ていた。夫で作家の車谷長吉(くるまたに ちょうきつ)さんが亡くなって10年が経ったことを。そして、彼にまつわる幾つかのエピソードを語っていた。つられるように、僕も車谷さんに初めてお会

第1103号『初心忘れるべからず』

人生の手引書として時々読み返す本がある。世阿弥の最初の著作『風姿花伝』と最後の著作『花鏡』。 父であり師匠でもある観阿弥からの遺訓をまとめた最初の著作、「秘すれば花なり、秘せずは花なるべからず」で知られる『風姿花伝』。

第1102号『魚ごころ』

先日、酒席で釣り好きな先輩から、その奥義の一旦を教授いただいた。曰く、狙う魚によって、えさ・糸の長さ・潮目・時間などを読みながら釣糸を垂れるのだと。傍目から見れば、のんびりしているように見えるが、実は細々と計算し魚ごころ

第1101号『2025八景島トライアスロン、完走。』

先週末、トライアスロンレースに出場した。住まいからほど近い、横浜市金沢区にある八景島シーパラダイスとその周辺で開催された『2025八景島トライアスロンフェステバル』。 距離は、スイム750メートル、バイク20キロ、ラン5

第1100号『書き続けること』

いつも通り、5時を少し過ぎたところで目が覚めた。起きてから仕事に取り掛かるまでの行動は、ほぼ決まっている。トイレに行き、口を濯ぎ、髭を剃り、顔を洗う。鏡に向かって自分の顔を眺め、目や鼻や肌の具合を確かめる。”今日もなんと

第1099号『この国の姿を考える』

トランプによる高関税政策とは何か。僕なりに見聞きしたことをまとめてみた。 米国政府は、これまで大きな財政赤字を55年にわたり続けてきた。どんな状態だったのか?国内でモノを100しか作っていないのに、モノを外から持ってきて

第1098号『広告の終焉』

”米Google(グーグル)は2025年9月9日、AIを活用した検索機能「AIモード」の日本語での提供を同日付で開始すると発表した。” この記事を今朝ニュースサイトで読んだ。 生業として、永らく広告ビジネスの業界に身を置

第1097号『「やらない」を決める勇気』

起業して間もないころの話である。メンタルが壊れかけたことがある。 ある日、代理店の担当者(余談だがトライアスロン仲間として、いまもお付き合いしている)から喫茶店に呼び出された。そして、メインにしていた仕事が年末で終わると