花期花会

2019年11月13日第47回『地域イノベーター紹介-その14』

折込広告文化研究所の鍋島です。

前回に引き続き、我が関心事、地域をデザインしているイノベーターを紹介します。

へぇ~、こんな面白い人が、こんな素晴らしい人が、いるんだ~と軽く受け止めていただければ幸いです。

「地域イノベーター」シリーズその14

今回の地域イノベーターは、2012年に「新聞遊び」=「まわしよみ新聞」を考案した大阪の人、観光家でもあり、コモンズ・デザイナーの陸奥 賢(むつ さとし)さんです。

< 陸奥賢さん >

 

「コモンズ」って言葉、あまり聞きなれていませんね。

「コモンズ」とは、「他者が集う場所」、だれのものでない全体のもの、「共有財産」、よくある言葉では、農山村の共有地、入会地のことを言います。

陸奥さんは、それをデザインする人です。

陸奥さんが、今回紹介する「まわしよみ新聞」を考案する前は、もともと大阪・住吉生まれで堺育ちだったこともあって、2007年には堺を舞台にしたコミュニティ・ツーリズム企画で「SAKAI賞」を受賞したり、2008年から2013年まで大阪コミュニティ・ツーリズム推進連絡協議会のまち歩き事業「大阪あそ歩」に携わり2012年には観光庁長官表彰を受賞しています。

このように陸奥さんは常に、まちづくり、観光、メディア、アートの境界を逍遥しながら大阪周辺で活躍していました。

その陸奥さんが考えた「いつでも、だれでもできるコモンズ・デザイン」の「まわしよみ新聞」を説明します。

< まわしよみ新聞の進行図 >

 

まわしよみ新聞は3つに構成されます。

最初は、「まわしよみタイム」。

新聞をまわしよんで、記事を切り抜く時間です。

目安は15分くらい。4人で1チームがオススメ。

記事は、とりあえず気になったものはすぐ切り取って、あとでプレゼンするときに選びます。

何を切り取ったかは、チームの他に人に見えないように伏せて置きます。

 

次に、「プレゼンタイム」。

切り抜いた記事を紹介して、感想を言いあいます。

目安は40分くらい。

ひとりで3枚の記事をプレゼンするのがオススメ。

盛り上がりすぎるので、時間制限があるときは、タイムキープすると良いです。

 

最後は、「新聞作りタイム」。

切り抜いた記事を使って壁新聞に作ります。

目安は30分くらい。

これは盛り上がったなあという記事を、みんなで3枚ほど決めて、それをまず表紙の一番目立つ部分に貼ります。

「まわしよみ新聞名(チームの総意で名付けます)」「日付」「編集局」を書き、その後、余白の部分に、残った記事をどんどん貼っていくのが新聞作りのコツです。

記事を貼る、感想を書き込む、イラストを描くなど、同時進行で、みんなで一緒に仲良く作ります。

< まわしよみ新聞チームで新聞作成中 >

 

さて、陸奥さんが「まわしよみ新聞」を考えたキッカケですが、、、

2012年春頃に、陸奥さんは、こんな場面を目撃します。

釜ヶ崎の或る喫茶店で、日雇労働者のおっちゃんとママさんが新聞を回し読んで、楽しんでいる光景を。

次に同じ年の年夏頃、釜ヶ崎の古書店で、昭和40年代の新聞のスクラップブックを見つけます。

誰のスクラップブックかは不明でしたが、スクラップすることの面白さに、陸奥さんは、気付いたそうです。

それらのことを頭の片隅に入れていた或る日、大阪にある應典院というお寺でイベントがありました。

そのお寺の住職から、「なんかオモロイことありまへんか?」と言われて、考案したのが「まわしよみ新聞」でした。

集まる人によって、個性的で面白い壁新聞ができあがる「まわしよみ新聞」。

そんなキッカケで、その後、全国に拡がり、小学校や老人会などでも開かれています。

なんと陸奥さん、「まわしよみ新聞」を思いついたとき、陸奥さん自身も、新聞は10年ほど読んでいなかったそうです(笑)。

「まわしよみ新聞」は、紙の新聞というアナログを使って、大人も子どもも参加できるのが特徴で、選んだ記事を通して、お互いのことがわかったり、コミュニケーションが深まるという仕掛けです。

初めて会った人に「自己紹介をして」と言われると戸惑いますが、一緒に新聞を切り抜いて「自分はなぜこの新聞記事を選んだのか」を紹介すると一遍に理解してもらえます。

面白いのが、例えばAさんが出した記事をBさんには興味はなかったとしても、いざAさんの話を聞いてみると興味が出てきたり、興味がなかったBさんが、新しい視点でAさんの記事への感想を語りだすとAさんにとっても予想外の発見や意外な驚きにつながり、予想しない方向に話が転がっていく。

これが面白い現象です。

 

この面白いことや気付いた点をまとめたら「21」あったそうです。

以下がそうです。

☆自分の世界を広げる

☆他者を理解するコミュニケーション・ツール

☆新聞記事(話のタネ、対話の土台)があることで、自然と話が弾んでいく

☆プレゼン力を養う(カードゲーム的面白さ)

☆「無目的」「ノーテーマ」で開かれ、平等に発言機会が与えられる対話の場

☆レイアウトやデザインのスキルを磨く

☆メディア・リテラシーを育てる

☆新聞購入者が増える(「社会の公器」としての新聞応援企画)

☆アナログ的手法で、誰でも参加しやすい。「参加者の多様性」を担保できる

☆「顔が見えない記事」から「顔が見える記事」へ

☆「ぼくらの新聞」を作ることで「共有場=コモンズ」が産まれる

☆「新読」(目のメディア)ではなく「新聞」(視読聴のメディア)にする

☆「新聞+他者との会話」というメディアミックス

☆メディアの遊技者(トリックスター)を作る

☆「脱・目的論的」であり「セレンディピティ」(偶察性)を楽しむ

☆個人芸と全体芸で構成され、「世界を作る手仕事感覚」がある

☆「NIE」(Newspaper in Education=教育に新聞を)ではなくて「PIN」(Play in Newspaper=新聞を遊ぼう)を

☆マスメディアとソーシャルメディアのあいだを担う「まわしよみ新聞」

☆みんなで作った「まわしよみ新聞」を掲示することで「活動の宣伝広報ツール」になる

☆「他者」にアプローチする「いつでも、どこでも、だれでもできる」というコモンズ・デザイン

☆大阪発の市民メディア

< 11月2日に横浜のニュースパークでのまわしよみ新聞サミット風景 >

 

< まわしよみ新聞の完成 >

 

さぁ、「まわしよみ新聞」を、いろんなところで、やってみましょう!

< まわしよみ新聞をわかりやすく解説した本 >

 

次回また、素晴らしい地域イノベーターをご紹介したいと思います。

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「鍋島」のプロフィール

鍋島裕俊(折込広告文化研究所 代表)

*1950年、佐賀県佐賀市に生まれる。

*1980年に朝日新聞社系の折込広告会社に営業で入り、その後、出版、マーケティング、社長室、メディア戦略を経て、無事に卒業(2015年)。

*折込広告全国大会の研修会・分科会や本会議での研修講師や基調講演の講師をプロデュースしている。これは業界への恩返しと考えてのサポート。

*研究テーマは、①折込広告の全般研究、②折込広告史の研究、③地域メディアの研究。

*お節介していることは、全国各地のまちづくり・地域づくりの当事者やそれを紹介するメディアの編集者たちを、勝手に紹介・繋いだりすること。

*2014年に「折込広告文化研究所」を設立。

*折込広告に関する執筆は、「商業界」「食品商業」「宣伝会議」「販促会議」「物価資料」など、過去に多々掲載された。

*印刷会社の“街おこし” 一般社団法人マーチング委員会の渉外部長。

*全日本印刷工業組合連合会(全印工連)CSR認定委員会の委員(前認定委員長)。

*その他、数店のお気に入り店舗(飲食店&本屋さん)の口コミ宣伝部長の名刺がある。

*オリケン・セミナーを定期的に主宰(達人シリーズ、著者シリーズ、今が旬シリーズ)。

*facebookでの発信は、多岐に渡る。

 

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執筆者

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鍋島 裕俊

(自称:折込広告研究所所長)

1950年、佐賀県佐賀市に生まれる。
1980年に朝日新聞社系の折込広告会社に営業で入り、その後、出版、マーケティングを経て、現在、メディアの方向性を考える戦略セクションに所属。
折込広告全国大会の分科会やセッションのプロデュースを担当(2000年の横浜大会、2008年の東京大会、2010年の東京大会)。
研究テーマは、(1)折込広告の全般研究、(2)折込広告史の研究、(3)新聞販売店のイノベーション研究など。特に新聞販売店のイノベーション研究は、2011年9月から早稲田大学ソーシャルアントレプレナー研究会で新規講座を開催。
折込広告に関する過去の著作は、「商業界」「食品商業」「宣伝会議」「販促会議」「物価資料」などに掲載。

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