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2011年08月03日第211回『「家飲み」が新しい』

▼注目したい食文化の変化

 「知足消費」が、消費のトレンドとなりつつあります。そしてこの消費傾向は、3:11の災害によって一層拍車が掛って来たと思います。そうした消費スタイルの一つが「家飲み」ではないかと思います。
 家飲み(いえのみ)とは各位には既に周知のことと思いますが、念のため定義すれば、
会社帰りにバーや飲み屋などで、同僚などと一緒に飲むのではなく、近所の友人や学生時代の友人などを自宅に招いて飲んだり食べたりする、いわゆる家庭パーティのこと。
 家飲みの背景には、外で飲む場合と違い、周囲に気を配たり、終電の時間などを気にしなくてもよく、家で飲む場合には費用を抑えることもでき経済的。気軽に飲むことができるため配偶者同伴で集まることも多いようです。
また、子育て中のママたちが飲み会を開く「ママ飲み」もよく行われるようになっているとのことです。

▼「家飲み」リーダーは女性

 アサヒビールお客様生活文化研究所09年6月17日~6月23日の調査)が全国の男女1785人に「家飲み」に関する調査を行ったところ、「どちらかといえば『家飲み派』」と回答した人は全体の79.8%。このうち女性は80.3%で、男性の79.4%を上回っていると報告しています。 一年前に実施した同調査では女性が77.8%だったことから、家飲み派が女性中心で増えているのがうかがえましょう。
 先日、お誘いを受けて「家飲み」パーティに参加しました。
その時の印象では、この流行は表層的な一過性流行ではなく、結構根深く生活変化に根ざしているのかも知れないと思いました。
 皆さん・3Vなる消費価値観をご存知でしょうか?この言葉は高度成長を支えた3Cの次なる消費対象として一部では期待されていた消費対象で、Village(別荘)、Visit(訪問)、Voyage(海外旅行)が3つのVでした。
しかし、この3Vは海外旅行を除き2つのVは不発でした。
 思うに不発のVは、いずれも女性の支持を得られなかった消費対象だったからだと思います。
例えば別荘です。別荘ライフを本当に楽しめる人々は、別荘の管理人、使用人、料理人を専用で雇える超富裕層だけです。
いっときバブルの時代、別荘ブームがありましたが、実態は転売、資産増大などを目論む投資以外何物でもありませんでした。
別荘ライフを目指した非富裕層では、実際に別荘ライフが、楽しみよりも主婦の負担強化に繋がったことは明白です。
笑い話ですが、別荘はいまや亭主が妻から冷笑されつつ、ひとり出向き家事の苦労を実感する修業場に様変わりしているのです。
訪問も同じです。亭主が不意の客を招いてくれば、主婦たるもの、いい顔が出来るわけがありません。よく不意の客や長居の客には、箒を逆さに立てると言う風習?がありましたが、これも昭和の初期の話。かつての「磯野家」にも見られた記憶があります。
しかし、核家族が進行し、住まいも郊外に移り、さらには女性上位の時代が続くに伴って箒を立てるなどの屈折した心境に立つ奥様などは居なくなり、やっかいで面倒な「旦那さまの独りよがり」であるVisitは現実味を失っていったのです。
 しかし、長期の不況と女性の働き方の変化、さらにはシングル化に見られる家族のあり方の変化により、皮肉にも高度成長期が描いた3Vへの回帰が新たなライフスタイルとして価値をもってきたようです。

 ▼「家飲み」は・勝ち組女性のステータス?

あくまでも個人的な感想かもしれませんが、「家飲み」は、鍋の流行とはちょっと違います。鍋の流行は、個食やばらばら家族を結ぶ家族団欒への期待がありました。
しかし、「家飲み」はそうしたやや生活臭いものであるよりは、都会的で洗練されたもの、同時にある意味では就職、結婚、育児など、かつては日常的で当たり前で誰でも享受できた「暮し」が実際にはとても難しく得がたくなって来た時代だからこそ生まれたものであるようです。
うがった見方かもしれませんが、「家飲み」が出来るにそれなりの条件が整っていることが必要です。まずは「自分の生活基盤」があることが前提です。例えば住まいで言えば、他人が来ても恥ずかしくないレベルのスペースの所有者であること。・・・例えば都市型コンパクトマンションが装置として便利で恰好よい・・・。郊外であれば自由に出来るスペースです。場合によっては来客が気兼ねなく宿泊できるスペースの余裕、また郊外らしい環境も望ましい・・・。
 またシングルであれ、同棲であれ、男女いずれでも構いませんが、共に食卓を囲む人間関係がなくては、家飲みは、成り立ちません。もちろん時間、お金のほどほどの余裕も必要でしょう。
お料理に関してはさほどの腕がいるとは思いませんが、しかし、食卓を創るだけのサービス精神とスキルとセンスは不可欠です。
さらには夫や妻の理解も何よりも大切なのは言うまでもないでしょう。
ママ飲みになると尚更ですね。

▼幸せ顕示の快楽が味わえる機会

 こうし考えると、「家飲み」を楽しめることは、①時間、②お金・空間持ち、③人持ち(同伴者の愛情なども含めて)の3拍子が揃えられる恵まれた人々に限られます。
この3つを手にした女性達にとっては、「幸せ」を顕示できる機会が「家飲み」でもあるのです。
いま世間を挙げてHQL(健康的で品質の高い生活)の向上が求められていますが、このカギは上質な「人間」関係です。そこで大きな役割を果たすのは「食」。そして「家飲みは」はこの頂点に属するものでしょう。
 かのブリア・サラバンは、著作「美味礼賛」で、「食卓のよろこびは人類だけに限られたものである。それは食事の用意、場所の選択、会食者の招待など事前のいろいろな心づかいがなされて初めて生まれる。食卓のよろこびは、食べるよろこびと違い、飢えや食欲には依存しない」と。(岩波文庫:関根・戸部松訳)
「家飲み」、まさに「食べることから得がたい平凡を実感する食卓文化へのシフト」。こう言ったらちょっと言い過ぎでしょうか?

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執筆者

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宇田 一夫

ファンサイト有限会社 顧問/コミュニケーションプロデューサー

1939年3月生まれ。 早稲田大学第一文学部史学科西洋史卒。
1962年株式会社博報堂、株式会社日東エイジェンシーなどを経て、株式会社エイムス設立。アカウント・プランナーとして「コミュニケーション&マーケティング」を課題に各種キャンペーン・プロジェクトを企画・プロデュース。
2005年愛知EXPO中央アジア共同館(ザ・グレート・シルクロード)プランナー
東洋美術専門学校視覚伝達学科講師

【賞】国際見本市、日経新聞・日経産業新聞・日経流通新聞・ショッピング他などで受賞

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