花も実もない! Marketing One Hit Shot

2011年06月09日第207回『「思考停止連鎖」現象』

▼寡占化と系列化

 3:11以降の広告ビジネスをどうればいいのか?一部で取りざたされています。
失われた10年で「買わない」消費者が増大してきていますし、「足るを知る」消費者が増大、それに並行して自己表現をニーズとする消費は激減しています。
 こうした市場環境では決め手はあらゆる分野での「選択」と「集中」でしょう。
つまりリストラ、給与ダウンでの経費削減を基本とした企業行動であり、広告に関しては選択したメディアへの集中投下とメディア購入・クリエイティブなどのコストの削減です。
この「分かりやすい」企業行動の結果が追い風であったことは、5月13日付けで新聞紙上に紹介された電通、博報堂など大手広告会社の大幅増益の3月決算です。
 またメディア利用に関してはTVへ重視が相変わらずであり、合せてインターネット広告への傾斜です。
こうした傾向は再び予測される3:11以降の長期不況の期間には、大手を中心とした寡占化と系列化の進行はさらに加速することでしょう。

▼「コンセンサスが得られる」メディアのみが生き残れる

 かつての広告ビジネスでは「メディア」プランは不要というのが事情通の常識でした。つまりリーチとフリーケンシーそしてインパクトを考えると自ずと答えは明快です。
(=TV広告を安く買い付けること)この考えはいまでも生き残っています。時代の旗手、インターネットも幻想に過ぎません。
 大手各社は、このニューメディアの登場により複雑化している消費者の生活行動を分析するツールを開発してきていますが、率直に言ってインターネットの効果は判明しているとは言い難い、素人の私には量的志向を是とする旧メディア時代のそれと本質的には変らないという感想を強くしています。
 身もふたもないことですが、広告主の広告への期待は、以前にも増して「安く」「早く」「目に付く」です。
しかも広告にはお金がかかりますからクライアント組織のコンセンサスが経費削減時代であるが故にさらに必要です。
この点で「TV」以上のメディアはありません。インターネット広告については、費用が余りかからない?どこでもやっている時代の趨勢に乗ったメディアである?よく分らないが「プロが言うのだから、まあ、いいだろう?」です。
こう考えると理屈っぽいメディアプランは不要であり、せいぜい専門家・大手という信用の担保があれば十分の条件です。クライアント側では、買い手市場であるが故に、聞きたい案を聞くだけ。

▼協力会社の美名のもとの無責任

 そんな事情の中で、企業は広告活動を計画するわけですが、クライアントでは長期に渡っての予算削減の結果、プロの育成が事実上行なわれず、担当者は「予算」「コスト」のチェック、自社内組織での根回しに長けた人材しか存在していません。 こうした組織で出来ることは、「見積り合せ」と「プランづくり・実施の丸投げ」。結果は無責任の蔓延です。
 この無責任は協力会社と言う美名のもとに外注化、下請け化などが当然とされて無責任は拡散してきました。
その元締めが大手広告会社です。が、そこでも事情は同じです。
 いまや広告会社の顧客とは、生活者のことではなく大型広告出広が期待できるいわゆる「クライアント」のことです。また「提案」とはクライアント組織・キーメンが気に入る案の提示に他なりません。従って広告会社の活動は営業となり、営業は全力を挙げてこうしたクライアントの好みや思考を掴み、それをマーケターや制作チームに流しクライアントの意図に沿った案をプレゼンと称して提示するのです。うまみがないのは承知の上で、プレゼンの依頼に応えない広告会社は稀少です。

▼誤った顧客志向と思考停止

 この結果、何が起こっているのか?それはサービスサプライチェーン全体組織挙げての「責任の分散化」と「思考停止の連鎖」です。
 また顧客=仕事を失いたくない恐怖からの「近視眼的な滅私ご奉公」です。
 これは大きい、小さいは別として本来組織が持たねばならない「独自」性を知らず知らずに損なって来ています。
 おそらくはいまや老人だけが記憶している伝説かもしれませんが、クリエイティブでは一目も二目も置かれていた制作会社がメインクライアントの美意識との違いを認識し決然と取引を断った事例を思い出します。
 広告ビジネスではクリエイティブが料金を支払って貰えるのは希な、冷や飯を食っていた時代だけに、奇特なクライアントとの関係を断つのは経営的には蛮勇であったかもしれません。しかし、こうしたプロとしての意識と使命への信念、意気の高さは忘れられません。
 もちろんこの会社の「蛮勇」を感じて育った方々は、超一流クリエイターとして現在でも大いにご活躍しています。
 
今回の震災では、日本の美点も再認識されましたが、同時に欠陥も露呈しました。
それは目先の顧客しか見ない顧客への誤った考えです。
この考えを変えるのには勇気が要るのは間違いありません。
しかし、ここに挑戦しない限り明日がないのも事実です。
行くも地獄、行かぬも地獄ですね。

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執筆者

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宇田 一夫

ファンサイト有限会社 顧問/コミュニケーションプロデューサー

1939年3月生まれ。 早稲田大学第一文学部史学科西洋史卒。
1962年株式会社博報堂、株式会社日東エイジェンシーなどを経て、株式会社エイムス設立。アカウント・プランナーとして「コミュニケーション&マーケティング」を課題に各種キャンペーン・プロジェクトを企画・プロデュース。
2005年愛知EXPO中央アジア共同館(ザ・グレート・シルクロード)プランナー
東洋美術専門学校視覚伝達学科講師

【賞】国際見本市、日経新聞・日経産業新聞・日経流通新聞・ショッピング他などで受賞

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