低成長、成熟市場、高齢者市場とマーケティングの現状を表すキーワードは、これらの3ワードであることは間違いないでしょう。
同時にこうした市場での競争優位を得るには、パイが縮小している現実の下で
1.自社のお客さまとのよりよい関係をどのように築き、維持するか、
2.他社のサービスに流出するお客さまをどのように防ぎ、
3.一方他社の固定されていないお客さまをどのようにして自社に引きつけ安定的な関係を創り上げていくかが、市場戦略の重要課題となりましょう。
これは今さらながらの原理原則です。
しかし、実際にこうした市場戦略を推進する場合、あなたの企業は、自社との関わりにおいてどれほどのお客様のデータを持っているでしょうか?
経験的な物言いで恐縮ですが、それはあまりに少な過ぎるようです。
▼例えば富裕層について・・・
先日、不況の常として、もはや日常化したプレゼンに参加しました。富裕層に絞った刊行物を発刊したいと言うクライアントのオリエンテーションでした。
もともとがラグジャリーなサービスで差別化していた企業ですから、こうした意向は当然のことでしょう。しかし、この企業が提供している価値について、どんなお客さまが賛同し、その比率がどれくらいか?また他社のそれと余り差を感じていないお客さまがどれくらいいるのか?それらのお客さまはどんなお客さまなのか?
ロイヤルカスタマーには何か特性があるのか?動機付けとなっているのはなにか?などなどについては見解は示されておりませんでした。
ご承知のように富裕層は、狙い甲斐のあるターゲットです。しかし、それゆえにこの層の開拓・維持には競争も激しく困難が伴います。もちろんデモグラフィックなデータを含め、一般的なプロファイリングでは役に立ちません。俗な言い方ですが、ハウツー本では、ナンパできないのと同じです。
ターゲットにもう少し踏み込む肉薄したデータの収集が必要だと痛感しました。
▼価値感度へ敏感な人材づくり
価格破壊は、不況期の常套手段です。かつてお世話になった玩具メーカーの社長は、「値下げをすれば流行遅れの玩具でも売れる」と言っておられました。いわゆる「バッタ屋」商売はこうした価格破壊を前提に成り立つビジネスです。通常バッタ屋に流れた玩具は縁日、お祭りで売られています。
バッタ屋に渡すときには、在庫を現金に換え、資金繰りのカバーが主目的。収益は後回し。これは正統ではないことは言うまでもないことです。
資金が回れば、また儲けられる機会にも遭遇するかもしれませんが、どれほど続くことでしょうか?この不毛のビジネスからどのように抜け出すか?
それは売りの現場でのコミュニケーション力の強化です。
売りの現場のコミュニケーション力とは、提供する価値の伝え方であり、お客さまのその伝えられた価値への感度の中身とそのレベルを吸収する力です。そのカギはPOSなどの売り場テクノロジーではなく、人との対面から読み取れる人間力、タレント性でありましょう。
このタレント性の育成には、「顔のない」サービスをベースとしたマニュアルレベルの教育では不可能です。
▼情がカギ
富裕層、シニア、高齢者と期待に満ちた市場は目の前にちらついています。しかしこれらはやっかいなことに「満足」は情動的な部分で左右されるもので、機能、品質、価格などモノがサポートする比重は少ないのです。それゆえに先端的なIT技術をいくら駆使して効率よく情報を伝達しても売りには結びつきにくい市場でもあります。むしろ知識よりも情、同時に「お客を知る」「商品を知る」お客さま目線での温かい「目利き」が求められているのです。
最近のニュースネタですが、リタイヤしたシニアから広く人材を求め起用して売り上げを大幅に向上させている中小の不動産会社や小規模な建て売り会社が紹介されていました。
こうしたことはニュースの話題にすぎないかも知れません。
しかし、一方、こうしたことは、お客さまが本当は何を求めているのか?を知る道しるべとも言えなくはありません。