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第147回『一つの時代の終わり』

 先日朝日新聞の声の欄に、大手外食企業のY氏の解任を期に未熟練労働と低賃金を経営の基盤とする外食産業の変革を期待する趣旨の投書が眼につきました。
まさにその通りでしょう。
 
 かつて同氏の率いる関連企業に関わり、それらの目覚ましい成長の実際を見聞きしたものにとっては、この投書した方とは別の感慨を抱きます。
それはひとつの業種・業態が時代変化に対応するのが、如何に難しいか?の実感であり、同時にこの時代変化を受け容れ、成長を維持させていくのはやはり経営者の発想に他ならない、という確信でもあります。

 彼の考えは、サービス業で成功するのには、購買能力の確保と並行して均質なサービスをすべての人に分け隔てなく提供することで、そのためには大量の販売力とサービスの基準となるマニュアルを整備し、効率的で合理的な業務を行うということでした。
煎じ詰めればチェーンの理論を背景にしたサービスの工業システム化の発想と言えましょう。
 
 しかし、このサービスの工業化発想は「ホスピタリティ 」の到来にはそぐわないものとなってきていまや市場との乖離が目立ってきましたといえます。解任の理由となった同社の経営不振はこれを物語るものです。
合わせて、同氏の最近の言動では私が気になったのは、BSE牛輸入規制や、低賃金労働人口の減少への不満とも見られる発言で、余りに視野狭窄ともいえました。
 
 確かに安い原材料の安定的確保は外食サービスの重要な課題であり、また安価な労働力の確保も同様であることは理解できます。しかし、もう少し視野を広げた新時代に向けての「外食の役割」「産業としての使命」などライフクオリティ視点での理念的な発想が必要とされていたのではないでしょうか? 
                                
 ホスピタリティの時代とは画一性やマニュアルとは対極にあるサービス概念です。それはお客様一人ひとりの異なる要望に対応することを重視します。またそれはモノ中心ではなく心の領域でもあり、情緒的ともいえる考えでもありましょう。これはモノ供給に軸足を置いた考えではなかなか理解は得にくい考えでもあるようです。
 
 とくにこうしたサービスではお客様もサービススタッフもお互いが理解し合い、協力しながら質の高いサービスを創り上げていくことで、その過程が重要であり、なんとも抽象的で頼りない考えでもありましょう。いわばお客様、スタッフともに「人」が価値を持つのが「ホスピタリティ」の特徴で、軍隊式に命令の一声で組織的に動くものではないからです。
 
 成功体験に埋もれた功成り名遂げたY氏の経済人としての感性は、おそらくはこの考えをほんとうにには理解できなかったのでは?、とりわけ働くスタッフが真の価値であるお客様満足を生み出す原点であること、そしてこうした価値を生む人材は、低価格即ち低賃金で入手できない事実をきっと納得できなかったのでは?と憶測してしまいました。

 ある意味で同氏は、「いいものを安く」の呪縛に囚われた「モノの時代」の人だったと思います。
まさに時代は終わっていくのです。

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