今回は、先日開催された web 2.0 Summit で公開されている白書 “Web Squared”を要約して紹介したいと思います。web 2.0 Summit は 、Web 2.0ブームに沸く今から5年前に始まったカンファレンス(当初はWeb 2.0 Conferenceとして開催)です。今年のweb 2.0 Summit は10/20から2日間サンフランシスコで開催されました。Web 2.0の提唱者であるTim O’ReillyとJohn Battelleによって書かれたこの白書は、”Web Squared: Web 2.0 Five Years On”と題して、このカンファレンスを立ち上げてから現在までの5年間を振り返りながら、ウェブのこれからを考えようとしています。
その最初の節で、キーワードとなるのは「増え続けるデータ」です。現在、携帯電話をはじめとして、さまざまな機器が何らかのセンサーを備えています。また、それらセンサーの情報がネットワーク上で利用される機会も一般的になりつつあります(たとえば地図情報と結び付いたサービスなど)。このとき、ネットワークはもはやインフラではなく、プラットフォームとして機能していると考えられます。
白書では、「プラットフォームとしてのネットワーク(network as platform)」の上で、アプリケーションは恒常的に組み立てられ続けており、またその原動力となるのは連鎖的に広がるユーザーのさまざまな活動による「ネットワーク効果」だと語っています。
`
私たちの洞察の中で重要なのは、「プラットフォームとしてのネットワーク(network as platform)」は、たんにネットワーク経由で古いアプリケーションを提供する「サービスとしてのソフトウェア(software as a service)」ではなく、はるかにそれを超えるものを意味しているということだ。それはつまり、まさに多くの人がそれを利用すればするほど改良されてゆく「ビルド(構築)されつつあるアプリケーション」と、ユーザーを獲得するだけでなく、ユーザーから学びまたユーザーの貢献の上に成り立つ「ネットワーク効果」を意味している。
`
続いて、ユーザーやセンサーが生み出す膨大なデータを有効なものにする仕組みとして集合知(collective intelligence)について触れています。「Web 2.0とは、つまり集合知をつなぎ合わせることなのである。」とも語っています。センサーがネットワークに接続された世界では、センサーが提供する情報は、これまで人間が入力していた情報とは違ったものを提供すると述べています。その特徴は、リアルタイム性とその量の多さです。
`
集合知アプリケーションは、もはや人間がキーボードに何かを打ち込むことによってだけでなく、各種センサーによって増え続けるものによって動かされているのだ。電話機やカメラはアプリケーションにとっての目や耳となり、運動や位置センサーは私たちがどこにいるかを伝え、私たちが何を見ているのか、またどれくらい早さで動いているのかを伝える。リアルタイムに、データは収集され続け、提供され続け、そして変化し続けるのである。その参入の規模はけた違いに増加していくのである。
`
ネットワーク効果によって、データ量は増大し、それを処理するアプリケーションも次々と生み出されます。現在においてすら、ウェブはもはや静的なドキュメントではなく、動的なある世界を持ちえていると言っても過言ではないでしょう。ウェブが作る世界を、どのように捉えて、考えればよいのか。この白書がその手掛かりになるかもしれません。
`
ウェブはもはや世界の何かを記述した静的なHTMLページの集合ではない。増え続けるウェブは世界そのものである——世界中のあらゆるものと人たちが「情報の影(information shadow)」を投げかける。情報の影は、データのオーラのようなものであり、インテリジェント(知的)なやり方でキャプチャー(捕捉)されて処理されるとき、意外な機会とびっくりするような言外の意味をもたらすのである。Web Squared(ウェブの2乗)は、こうした現象を探査してそれにある名前を付けるための私たちの手法なのである。
`
今回は白書の導入部分を紹介したところで筆が尽きてしまいました。また続けて紹介したいと思います。
白書の原典は下記から参照できます。PDF版のダウンロードもあります。